【訂正版】タイムズのカーシェアと提携するトヨタの狙い池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/3 ページ)

» 2018年04月30日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]
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戦略を実現するすり合わせ能力

 タイムズカーレンタルは、元はマツダレンタリースで、マツダとのつながりが深かった。それがトヨタに鞍替えするのはもちろん上述のTransLogによるシナジービジネスへの期待によるところが大きい。しかしそれだけでもない。

 マツダは18年3月期の決算見通しでグローバル販売台数を160万台としている。12年の実績が125万台なのでこの間に28%増えた計算になる。売れるのは喜ばしいことだが、生産キャパシティには限界がある。いずれひっ迫することが見えている。そこでマツダはフリート販売の抑制にかかっている。

 フリート販売とは大口販売のことで、レンタカー会社などは当然ここに含まれる。クルマを大量に購入するに際して定価でということはあり得ないから、当然厳しい値引きを迫られる。マツダの生産キャパシティがひっ迫しつつある中で、安売りしてまで数を追う意味はない。そこでマツダは、通常顧客向けに店頭での値引きを減らすとともに、フリート販売の抑制に出た。つまりパーク24に対しても、値引きを渋っているはずである。

 トヨタの場合、前述したe-Paletteや自動運転という巨大な新規ビジネスへの投資と考えれば、フリートで多少値引きするくらいのことは無視できる。つまりトヨタ、マツダ、パーク24という3社の都合を見事にすり合わせてこの事業は走り始めようとしているのだ。

 トヨタアライアンスのwin-winぶりは見事だ。マツダの現状からして、将来のどこかで生産余力を増強しなくてはならない。しかし工場の建設には巨額の費用がかかり、マツダにとってかなりの重荷である。だから今年1月、トヨタとマツダは共同で米アラバマ州に新工場を建設することにした。

 トヨタの側にも事情があって、北米で絶好調のスバルは車両の生産が追いつかず、従来受託していたトヨタ車の生産を止めて、自社製品の生産に専念したため、トヨタとしてはその補てんをしなくてはならない状況にあったのだ。

 こういう多くのパズルを見事に組み立ててトヨタは全方位の戦略をぐいぐいと進めている。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。

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