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コニカミノルタ常務を直撃 「副業解禁に踏み切った理由」「カメラ事業撤退」経験から得た危機感(1/4 ページ)

» 2018年05月10日 08時00分 公開
[勝木健太ITmedia]

 国内企業による「副業解禁」の動きが広がっている。特に、2018年に入ってからは、これまで以上に幅広い業種で「副業解禁」に踏み切る企業が増えており、スタートアップ企業のみならず、大手企業の中でも、従業員の副業を容認する動きが出ている。

 政府が推し進める働き方改革の中でも、「副業解禁」は重要な柱の1つとされており、 企業にとっても、「副業解禁」は検討の価値がある人事上の施策として大きな注目を集めている。今回は、日本を代表する電気機器メーカーとして知られるコニカミノルタが「副業解禁」に踏み切った背景と今後の目指す姿について常務執行役の若島司氏に話を聞いた。

副業解禁の目的は「イノベーションの創出」

――まず、 副業解禁に踏み切った背景について伺いたい。

若島: 一言で言えば、イノベーションを創出していくためだ。当社には140年の歴史があるが、様々な変化に対応することでサバイブしてきた。ただ、コニカミノルタを取り巻く事業環境を考えた時に、大変厳しい状況であることは間違いない。その中で、今回の中期経営計画では「課題提起型デジタルカンパニー」として社会課題を解決することを掲げた。  

 デジタル革命を受けて価値提供の在り方は劇的に変化している。そのような事業環境の中でお客さまに選ばれるためには、絶え間ないイノベーションの創出が必要不可欠だ。今回、 我々が副業の解禁に踏み切ったのも、個の多様性を生かすことで、イノベーションの創出を促進することが目的だ。イノベーションを生むためには、多様な人財が混じり合うことで、「火花が散る」状況を生むことが何よりも重要だと考えている。そのための手段の一つとして、副業を解禁した。

――なぜイノベーションの創出にこだわるのか。

若島: 当社は06年にカメラ事業やフィルム事業という創業事業から撤退し、デジタル革命の波がいかに産業構造を変えるかを目の当たりにした経験がある。私自身もそれなりに悔しい思いもした。それだけに、今後も生き残っていくためにはイノベーションを創出していかなければならないという危機感をもっている。現在のメイン事業である情報機器ビジネスにおいても、スペック競争だけではお客さまの支持を得ることはできない。

 これまでであれば、連続的な変化の中で改善を繰り返し、従来のビジネスの延長線上で、商品やサービスの品質を磨くという姿勢が求められていた。だが、フォーチュン誌による国際企業番付「フォーチュン500」に入っている企業であっても、デジタル革命によって3分の1はつぶれるという見方もあり、まさしく過去の成功体験だけでは解が出せない状況にある。

phot 取材に応じるコニカミノルタ常務執行役の若島司氏

――なぜ従業員の多様性が重要だと考えているのか。

若島: 仕事は人工知能(AI)がするわけではなく、あくまでも人がするものだと考えている。もともと当社は写真用フィルムメーカーのコニカと精密機器メーカーのミノルタが統合した会社であり、ダイバーシティ(人材の多様性)については思い入れがある。新卒、キャリア採用などの出自にかかわらず、異なる背景をもつ多様な人財を受け入れる素地があると思う。中途採用の中で、専門性をもった方を外部から即戦力として招き入れる例もかなり増えている。外からの視点というのは非常に有益だ。

 当社グループの従業員約4万5000人のうち3分の2が外国人であることも強みだと考えている。こうした従業員1人1人の強みを引き出していかなければならない。国内の女性社員の活躍についても同様だ。入社時は非常に優秀な女性社員が、ライフイベントの変化の中で、本当に当社で力を発揮できているか、という問題意識が常々あった。外国人や女性従業員など、多様性な人財の能力を生かすことでイノベーションを創出していきたいと考えている。

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