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「グーグルには売らない」 日本勢は音声翻訳で覇権を握れるか東京オリンピックに向け開発競争「激化」(2/5 ページ)

» 2018年05月16日 07時00分 公開
[中西享ITmedia]

 その結果、英語、中国語、フランス語、スペイン語など31言語の文字翻訳に対応し、そのうち23言語で音声入力、17言語で音声出力が可能になった。このアプリはスマホなどにダウンロードして使うが、個人利用は無料だ。すでに300万回もダウンロードされている。現在はこの機能を生かして、パナソニックはすでに「対面ホンヤク」というサービス名で製品化し、富士通も製品化しようとしている。

phot タブレット型の多言語音声翻訳機「対面ホンヤク」(パナソニックWebサイトより)

総務省は「翻訳バンク」を運用

 NICTは総務省とともに、さまざまな分野の翻訳データをオールジャパン体制で集積し、自動翻訳の多分野化・高精度化に活用しようとしている。具体的には、医療、ファイナンス、法律、知的財産、IRなど、それぞれの分野に合わせてデータを蓄積することで、その分野の翻訳精度をアップすることが目標だ。現在この自動翻訳アプリは、特許庁でも実際に利用されている。特許の審査をする上で、下訳をするために活用され、難しい特許関連の審査をスピーディに進める上で役立っているという。

phot 特許の審査の下訳に活用されている(特許庁Webサイトより)

 また、自動翻訳システムのさまざまな分野への対応や高精度化を進めるため、オールジャパン体制で翻訳データを集積する「翻訳バンク」の運用を17年9月から開始した。これにより、社会・経済活動のグローバル化が進む中で、わが国の国際競争力の強化に貢献できるとしている。

 自動翻訳技術の性能向上のためには、NICTが研究開発において取り組んでいる翻訳アルゴリズムの改良に加え、翻訳データの質と量の確保が重要となる。翻訳バンクでは翻訳データを集積して自動翻訳技術に活用することで、自動翻訳技術で対応できる分野を広げるとともに、さらなる高精度化を実現する。翻訳バンクの当面の目標として、100万文×100社=1億文の翻訳データの集積を目指す。

phot 翻訳データの提供量が多い企業には、音声翻訳技術の使用料も安くする仕組みだ

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