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「グーグルには売らない」 日本勢は音声翻訳で覇権を握れるか東京オリンピックに向け開発競争「激化」(3/5 ページ)

» 2018年05月16日 07時00分 公開
[中西享ITmedia]

京急が各駅に端末配備 富士通は医療用に

 京浜急行電鉄は、4月から「ボイストラ」をベースとした音声翻訳エンジンを使用する新たな翻訳アプリを全駅(泉岳寺駅を除く)のiPad端末に試験導入し、7月から本格的に配備する。このアプリは、同社がNICTなどと実施した共同研究の成果を活用し、日立超LSIシステムズが開発したものだ。外国人旅行客に多言語で案内を行う際のコミュニケーションツールとして活用するのが目的で、対話型の翻訳だけでなくタッチパネル型の忘れもの確認など、鉄道分野のニーズに対応した機能が搭載されている。

phot 京浜急行電鉄が音声翻訳アプリを内蔵したiPadを各駅に配備=京浜急行提供

 急病人が出た場合などで、医学用語など専門知識が必要な場合は、このアプリだけでは正確な翻訳が難しいため、同時通訳のコールセンターにつなぐこともできるようになっており、2段構えの通訳方式を採用している。このようなサービスを鉄道会社が導入するのは初めてで、同社は利用状況を見た上で、バスやホテルなど他の分野にも展開したいとしている。

 また、富士通は「ボイストラ」アプリを医療の現場に使えないかと、重さがわずか65グラムの小型で軽量なハンズフリー音声翻訳端末を開発、18年度から製品化する計画だ。胸のポケットに挟むだけの小型のもので、手がふさがりやすい診察や検査の仕事も医師や看護師がこの端末を使いながら患者と話ができる。

phot 医療現場で使われる小型の音声翻訳アプリ端末のイメージ=富士通提供

 インバウンドの急増によって病院に来る外国人も増えており、外国人対応としての翻訳のニーズは高まっている。雑音が多く飛び交う病院内で、患者と医師の声だけを拾って翻訳するには独自のノウハウが必要となり、富士通はこの部分の技術開発に苦労したという。

 販売にこぎつけるためには、コストがポイントになる。いくら技術的に優れた翻訳端末でも、価格が折り合わなければ病院などで購入してはもらえない。端末のコストをどこまで下げられるかにかかっている。

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