現地法人は独立資本で、合弁の形式はとっていない。店舗は全て直営にこだわっておりフランチャイズはない。これは、初めて海外進出したときから堅持している方針だ。益岡部長はその理由について次のように説明する。
「仮に合弁の形式をとるとしましょう。現地パートナーはすぐに黒字化を要求することが多いですが、海外に進出したレストランが1〜2年で黒字になるわけがありません。日本人を現地法人に派遣するだけでもかなりの固定費が発生するからです。事業が軌道に乗るまでじっくり取り組むには独立資本が向いているのです。
フランチャイズ形式をとると、店舗のオーナーが提供する商品や価格を勝手に変える可能性があります。そうなるとサイゼリヤのブランドが棄損(きそん)してしまうので、直営店舗にこだわっています」
サイゼリヤの海外法人は赤字の期間が長かった。日本の大手外食チェーンの中には将来の展望が明るくないと判断して撤退するケースもある。しかし、赤字だからとすぐに撤退せずにコツコツと営業を続け、人材育成を続けたことが成功につながった。
サイゼリヤは03年、上海に海外1号店をオープンした。益岡部長は取締役人事部長という立場で1号店の運営に携わっていたが、当時の状況を次のように振り返る。
「進出当時は(客単価が)現地の大手ピザチェーンより2〜3割安ければいいだろうぐらいの感覚でいました。しかし、お客さまがほとんど来店しなかったので、急きょ対策を練ることになり、店舗にあるメニューブックに直接マジックでバツマークをつけて、全て半額に書き直したこともありました」
値下げの効果もあって来店数は増えたが、知名度が低かったことがネックだった。しかし、ある事件をきっかけにサイゼリヤの認知度が一気に高まったという。
「05年に中国全土で大規模な反日デモが発生しました。これは本当に偶然なのですが、デモ隊のスタート地点の近くに上海2号店があり、ゴール地点付近にも1号店がありました。デモに参加した若者が当店で食事をしたことで、『サイゼリヤのピザやパスタが安くてうまい』という評判が広がりました。当時、サイゼリヤは中国企業だと思われていました」
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