――確かに7つも8つもAIの入ったロボットを導入していたら採算も合いませんね。
海老原: さらにもう1つの問題があります。音声認識や画像認識などの特定分野で機能する「特化型AI」というのは、どんな問題であっても勝手にその仕事をディープラーニング(深層学習)によって覚えていきます。例えば今までにない新しい形のケーキが入ったとしたら、そのケーキを並べる最適な方法を、例えば別店舗の人間が試行錯誤してうまく並べた様子などを、監視カメラの画像データで見て、勝手に学習するのです。
そうすると7〜8つのAIが、それぞれ個別に進化することになります。こうして、AIもさまざまな分野で勝手に進化すると、それぞれのロボットも調整が必要です。その帳尻を合わせられるかも疑問です。
企業もAIの研究を有名大学や先端メーカーと一緒に研究しているケースが多いものの、「実際にはうまくいかないから人の手で仕事をしてもらっているのです」と答えます。これが企業によるAI推進の現状ではないでしょうか。
――早い段階でAIによって淘汰されるのは、どんな仕事なのですか?
海老原: 例えば、AIによって最初に淘汰されるのは、事務処理系の仕事に代表される「コンピュータの中で完結する仕事」だと言えます。もう1つ、AIに代替される可能性が高いのは、いわゆる「手に職ワーク」というやつです。例えば、翻訳、通訳、Webプログラミング、各種士業などですね。
ビジネス誌などでは、「今の仕事では食べていけなくなるから、もっとスキルをつけなさい」と良く言われています。でも実は逆なのです。そうした特定のスキルの方がAIに取って代わられて、個人のキャリア形成上、一番ムダな投資になる可能性があるのです。
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