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加藤厚労相を直撃 「高プロの要件を変更する考えはない」 「働き方法案」が参院で審議入り(2/3 ページ)

» 2018年06月05日 07時00分 公開
[今野大一ITmedia]

「非正規」という言葉を一掃する 

――同一労働同一賃金について、いわゆる正社員と非正社員の待遇格差をなくすとしている。加藤厚労相はいかなる格差是正の在り方が望ましいと考えているか。

加藤厚労相: 今回は同一企業内における、正規雇用で働く方と非正規雇用で働く方の不合理な待遇格差を禁止するという内容だ。つまり、同じ仕事をしているのに雇用形態によって差別的な取り扱いをしてはいけないということである。

 ただ、「禁止する」だけでは実効性は上がらない。不合理な待遇差を解消するために、実効性のある制度を目指す。例えば企業に対しては、非正規で働いている人の求めに応じて、正規で働く人などとの待遇差の理由について、説明義務を課した。

 また、不合理な待遇差の是正を求める人のために、最終的に裁判で争うことを保障する法制度も整備する。ただ、実際に裁判に訴えるとなると経済的な負担が大きい。従って、行政による履行確保措置や裁判外紛争解決手続(行政ADR)も整えていかねばならない。行政ADRは、当事者が無料で利用できるようにする予定だ。

 どんな雇用形態を選択しても納得を得られる処遇を受け、その仕事に取り組んでいけること。多様な働き方を自由に選択できること。それがひいてはわが国から「非正規」という言葉をなくすことにつながっていくと考えている。

 同一労働同一賃金については、すでにガイドライン案は示させていただいた。法案通過後に、もう一度具体的なガイドラインを法案にのっとって作る予定だ。それをベースに、具体的な対応を企業の現場で考えていただきたい。

――日本は長時間労働者の割合が欧米に比べて多く、仕事と家庭の両立が困難だといわれている。

加藤厚労相: 先述した通り、「過労死の撲滅」にはしっかり取り組まなければならない。具体的には、長時間労働の是正によってワークライフバランスを改善すること。男性による家事や育児の時間を増やすことができれば、「もう1人子どもを持ちたい」という子育てへの意欲向上にもつながり、少子化対策にもなる。

 シニアや女性の方の中には、長時間働くのは無理であっても、午前9時〜午後5時といった定時であれば、働くことができるという人もいる。短い時間の中で、いかに仕事の段取りを考え、生産性を上げていくのか。仕事の在り方を、本人だけでなく職場の管理者も考えていくことが重要だ。生産性向上の面でも、長時間労働の是正は、われわれがしっかり取り組まなければいけない喫緊の課題だと考えている。

phot 「仕事の在り方を、本人だけでなく職場の管理者も考えていくことが重要だ」と話す

――「残業時間の上限規制」を進める方針だが、実効性ある制度を設計する上で、何が重要だと考えているか。

加藤厚労相: 今回の大きな成果は、「罰則付き上限規制」が設けられたことだ。労働基準法70年の中で特筆すべき大改革といって良い。

 時間外労働の上限規制については、労働政策審議会において議論を重ねてきたものの、なかなか答えが出なかった。労働者側と使用者側ではそれぞれ意見が違ったからだ。

 これまでは「1日8時間で週40時間」という基本の労働時間があったものの、36協定を設けた場合は、それを超えて青天井で働くことが可能になっていた。だが、今回は時間外労働の上限規制として「原則月45時間、年360時間」と天井を作った。

 ただし一時的な業務量の増加などやむを得ない場合もある。その場合、労使が合意した場合でも、上限を年間720時間、複数月では休日の労働も含んで平均80時間、単月では休日の労働も含んで100時間未満という限度を設けた。また、月45時間を超える時間外労働は年間6カ月以内に限っており、これに違反すると罰則を科すという中身になっている。

 中には「この規定では過労死を防げない」との批判もある。だが、まずは「天井を作る」ことで労使が合意し、その合意に沿った形で法定化したのだ。これはあくまでも上限であって、そこまでは働いて良いという意味ではない。企業には、さらなる長時間労働の抑制が求められる。

phot 「罰則付き上限規制」に関する労使合意(首相官邸のWebサイトより)

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