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» 2018年06月07日 06時30分 公開

日本以上のブラック労働でも悲壮感はない、中国のある事情72時間連続で働け(3/3 ページ)

[高口康太,ITmedia]
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ブラック労働でも悲壮感はない

 そして、国有企業も成果主義を拡大し、民間企業に寄せていこうとしている。5月25日に発表された「国務院による国有企業給与決定メカニズムの改革に関する意見」では、成果主義の大々的な導入を指示している。のほほんとした社会主義的世界が残っていた国有企業にも、激しい競争を導入しようという狙いだ。

 見返りがあるからがむしゃらに働く。もし、そうした働き方が辛くなったとしても、中国では転職も容易だ。終身雇用制の日本では転職は大きな決断となる。会社に背くことは難しく、ブラックな環境でも受け入れざるを得ないことが多い。また、会社に逆らえずに違法行為に手を染めたという偽装問題も終身雇用制が原因の1つだとされている。

 一方、中国民間企業は転職が前提だ。新卒から定年まで同じ企業に勤めることはかなり珍しい。転職者の多くはより良い待遇を求めてのものだが、今の働き方が辛い、仕事に失敗して居づらくなった、上司と合わないといった理由でも、容易に転職先を見つけることができる。本当に辛い時には脱出する道が残されているわけだ。

広東省深セン市のソフトウェア産業基地。夜遅くでも煌々と明かりがともっている 広東省深セン市のソフトウェア産業基地。夜遅くでも煌々と明かりがともっている

 がむしゃらな働き方では「ワークライフバランス」が保たれないという問題もある。例えば、子育てをどうするかは大きな課題だ。中国では両親に頼るのが一般的なパターンだ。両親はがむしゃらに働き、祖父母が孫の面倒を見る。三世代での子育てだ。

 中国の幼稚園では送り迎えを担当しているのは、大半が祖父母の世代である。故郷を離れて就職した場合でも、子どもを故郷に送って両親に育ててもらったり、あるいは子どもの面倒を見てもらうために両親を呼び寄せたりするケースも珍しくない。中国の定年は男性が60歳、女性が55歳と早い。まだ若く、子どもの面倒を見る体力が残っている点も大きい。さらに一人っ子政策の影響で、祖父母世代4人に対し、子ども世代は2人、孫世代は1人という逆ピラミッドになっているため、人手をかけられるという事情もある。

 日本と同等か、それ以上のブラック労働が横行する中国だが、そこに悲壮感は漂っていない。がむしゃらな労働が収入に直結する、転職が容易、大家族制など、日本とは異なる中国社会の事情が背景にあるからだ。

 もっともこの状況がずっと続くわけではないだろう。個人業績が収入に結び付くのは中国の経済成長が続いているためだ。成長がストップしデフレになれば、金銭面で報いることは難しい。核家族化が進む中、三世代の子育てがいつまで続けられるかも未知数だ。

 中国もいずれ働き方改革に取り組む時代が来るのではないか。そのとき、日本の先行事例は成功例として捉えられているのか、それとも失敗例として教訓になるのだろうか。

著者プロフィール

高口康太(たかぐち こうた)

ジャーナリスト、翻訳家。 1976年生まれ。中国経済・企業、中国企業の日本進出と在日中国人社会をテーマに取材を続けている。現地取材を徹底し、中国国内の文脈を日本に伝えることに定評がある。著書に『なぜ、習近平は激怒したのか――人気漫画家が亡命した理由』(祥伝社)、『現代中国経営者列伝』(星海社新書)。ニュースサイト「KINBRICKS NOW」、個人ブログ「高口康太のチャイナ・ウォッチング」を運営。


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