日産については、日産とルノーの2社のアライアンスを考えると、電気自動車「リーフ」でEV市場を引っ張ってきた日産が参戦した方が自然だと誰もが考えるだろう。日産の広報は「EVの先駆者として、走りの楽しさを見せていきたい」と、参戦によるアピールに期待を寄せていた。また、「競争力のある存在でありたい」(同前)とも語り、参戦するからには絶対に勝ちに行くという強い意気込みが感じられた。
参戦体制として、日産やNISMO(ニスモ)のほか、ルノーからもエンジニアを集めている。カルカモ・ディレクターは「マーケティング、テクニカル、レースオペレーションなど、いろいろなチームがありますから、いかに密なコミュニケーションを取れるかが鍵でしょう。レースの翌日は毎回、反省会を開きたいと思う」と柔和に答えたものの、その目は真剣そのものだった。
「リーフは世界で累計30万台以上が売れました。ルノーと日産の、CO2を排出しないゼロ・エミッションの走行距離は、トータルで40億キロ以上にも上ります。このデータは間違いなくレース用の部品などにも応用できます」と自信を見せた。
フォーミュラEは市街地のコースで実施され、EVは街乗りに向いている。赤井氏がインタビューの最後に語った「少なくとも軽自動車を、全てEVにすればいいと思いますけどね」との言葉は印象的だ。
日本で「若者のクルマ離れ」が叫ばれ始めて久しい。ただ、それは都市部だけの話にすぎない。地方ではまだまだ自動車なしには生きられず、だから「クルマ離れ」はそれほど深刻ではない。それでも自動車の販売が減っていくのは、人口減少や都市部の住環境が原因だ。加えて、「失われた20年」によって実所得が増えない事情に起因する「買い替え需要の縮小」も挙げられる。
EVでレースをすることによって、競争原理が働き技術進化が加速する。コモディディ化も進むことになる一方、うまく市販車にフィードバックをすることができれば、車両本体の価格も下げられる。それは、消費者にとっては自動車が買いやすくなることを意味する。フォーミュラEの観戦者は平均年齢が27歳であり、若者が好むSNSとの親和性も高い。フォーミュラEで勝つことができれば、若者に対して訴求力も向上する。そうすれば、EVにシフトすることはもちろん、同時に「若者のクルマ離れ」への歯止めにもつながるだろう。
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