日曜夜、子どもから絶大な人気を誇る『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ)でも部族は登場するし、水曜にはやや深い時間帯だが、秘境モノの草分け的な番組『クレイジージャーニー』(TBS)が放映されている。
この傾向は特番だともっと露骨だ。例えば、3月に放映された『おたすけJAPAN』(フジテレビ)では、ガス・水道のない原始的な暮らしをする南米アマゾンのボラ族に和食を食べさせて喜んでいた。ちなみに、ボラ族は「地球征服するなんて」のなかで、普段はスマホを持ち洋服を着て生活していて、観光客が来たときだけ民族衣装に着替える観光部族として紹介され、ナスDが多額の民芸品を売りつけられ、“ボラ族にボラれた”として笑いを誘った。そのあまりにギャップのある描写ゆえ、「おたすけJAPAN」の方に「ヤラセ疑惑」が噴出している。
今年1月に放送された「世界各地の規格外のスポットを隊員たちが体を張って調査する」という『坂上探検隊』(フジテレビ)でも「地球最後の食人種」と遭遇するという触れ込みだったし、近年放映された番組でも、『五大陸横断!世界の部族24時その時刻秘境で何してる?』(フジテレビ)、『秘境の地からやって来た!仰天ニッポン滞在記』(テレビ東京)と部族をフィーチャーしたものがあからさまに多い。
われわれはこの状況が当たり前となってしまっているのでなんとも思わないが、外国人が見れば「なんで日本人はそんなに部族を見るのが好きなの?」と首をかしげられるような状況なのだ。
なんてことを言うと、部族バラエティを批判しているように聞こえるかもしれないが、そんなことはなくむしろ個人的には大好きだ。子どものころは『水曜スペシャル 川口浩探検隊』(テレビ朝日)はかじりつくように見て、パラワン島のジャングルで探検隊に石を投げて威嚇(いかく)する「猿人バーゴン」の姿を目にしたときの衝撃は、いまでも昨日のことのように覚えている。筆者がテレビ制作の現場へ飛び込んでみたのも、「誰も見たことがないものが見れるかも」という好奇心からだ。
そういう意味では、『クレイジージャーニー』や『地球征服するなんて』を見て、「僕も広い世界を見てみよう!」なんてヤル気スイッチの入る子どももいないとは限らないので、この手の番組にはそれなりの社会的意義もあるのではないかと考えている。
ただ、そういう個人的な思い入れをちょこっと脇に置いて、テレビなどの論調トレンドと、社会の空気との因果関係を考察してきた立場から言わせていただくと、現在のような「部族推し」が過ぎるムードはあまりよろしくない、というかむしろ、ヤバい。
バブル期にいた「勘違い日本人」を大量に生み出してしまう恐れがあるからだ。
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