実は昨今の部族推しの風潮とモロかぶりする時代が昭和にあった。先ほど触れた『川口浩探検隊』が人気を博した1970年代後半から1985年くらいの6〜7年である。
「秘境アマゾンの幻の原始裸族」「恐怖の首刈り族」「ターザンは実在した」「謎の原始猿人バーゴン」「ボルネオ奥地の巨大獣人」「幻の石器民族」などなど次から次へと登場する部族に日本中のチビッ子たちは胸を熱くさせたものだが、大人たちの間でも部族ブームがやってきていたのである。
きっかけは、1982年に公開された『ミラクル・ワールド・ブッシュマン』だ。先ごろ『イッテQ!』でも「世界で一番面白い民族」として取り上げられたアフリカ・カラハリ砂漠の狩猟民族・サン族を扱ったこの映画は日本で大ヒットして、主演のナミビア人俳優、ニカウさんはナスDどころではない人気者となり、飲料水のCMに出演したり、ムツゴロウさんと看板番組を持ったりもした。
ここにダメ押しをしたのが83年にアマゾンの部族を題材とした映画『食人族』である。「あなた、食べる? 食べられる?」という衝撃的なCMが話題を呼び、こちらも大ヒットを記録した。
このように多くの日本人が「部族」に熱狂していくなかで、その興奮をひきずる形でバブル景気へ突入していくのである。
「そんなのたまたまだって」と思うかもしれないが、一見すると無関係に見えるこれら2つの現象の根底には、戦後日本人がムクムクとふくらませてきた思想が見てとれるのだ。
それは一言で言ってしまうと、日本人は世界のなかでも特別な存在だ、と言わんばかりの「選民思想」である。
実は「昭和の部族ブーム」が起きる10年前というのは、日本で戦前のような「自画自賛ムード」が再び盛り上がり始めた時代だった。
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