連載
» 2018年06月19日 08時00分 公開

スピン経済の歩き方:「部族ネタの番組が増えると、日本はヤバい」は本当か (6/6)

[窪田順生,ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4|5|6       

人間の過ちもリピートする

昭和の部族ブームを牽引した映画『ブッシュマン』

 昭和の部族ブームを牽引した映画『ブッシュマン』は、飛行機のパイロットが捨てたコーラの空き瓶をサン族が拾ったことから始まるドタバタ劇である。生まれて初めて見るコーラの瓶を、劇中のサン族は楽器にしたり、皮をなめす道具として使うなどした。

 冒頭で触れた『日本で流行したアレ!秘境の民族に渡してみた』では、パプアニューギニアの人々に、湯たんぽやシャンプーハットなどを渡して、彼らがそれらを楽器やサンバイザーとして使うのを「へえ」と驚いていた。

 もちろん、笑いものにしようなんて意図はないのだろう。VTRのつくりとしても、「日本人では思いつかない新しい使い方が見つかった」なんて感じで、映画『ブッシュマン』がうたった「ビューティフルな笑いと感動」という「いい話方面」へもっていっているのは明らかだ。

 ただ、「差別意識」がなければなにをやってもいいのかという問題もある。

 1903年、民族衣装を身にまとったアイヌ、琉球、中国の人々が日常生活を送る姿を「展示」した「学術人類館」に抗議が殺到すると、日本側は差別意識がないと釈明した。かつてパリ万博で、芸者姿の日本女性が「展示」された際、現地で日本ブームが起きるなど大人気を博したことから、純粋に異文化を広める手段だと考えたというのだ。

 だが、その後の大和民族至上主義の高まりを見れば、美辞麗句のなかに「選民思想」(神に選ばれた特別な民族であるとする思想)という下心があった事実も否めない。

 ファッショントレンドやブームが繰り返すことからも分かるように、人間の過ちもエンドレスリピートするは世の常だ。

 東京五輪という日本人が最も勘違いをする愛国イベントまであと2年というところで、「部族」で感動しようというトレンドが出てきた。歴史に学べば、そこにグロテスクな下心があるとしか思えない。

 純粋に異文化に触れるのが好きだといいながら、欧米など先進国よりも後進国や部族を扱う番組が圧倒的に多い。最近では原始的な生活を送る人々を懸命に探し出しているようにも見える。

 彼らに「感動をありがとう」とかいいながら、なぜ自分たちの文化を押し付けるのか、そしてなぜ日本の素晴らしさを再認識みたいな自己満足ノリになってしまうのか。

 すべては彼らがわれわれの精神安定剤になっていると考えると説明がつく。「未開の部族」は「日本人は特別な存在だ」とあらためて思わせてくれる存在なのだ。

 こういう「選民思想」がこれまでも日本を危機に追いやったことを思い出すときなのかもしれない。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで200件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


前のページへ 1|2|3|4|5|6       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ