――HR Techの限界も少しずつ見えてきた気がします
城: 人事の世界で客観化された数値などなかなかないのです。採用で応募してくる人など、大企業でも母集団は1年間でせいぜい1万人。ビッグデータとはいえません。入社するのは500人程度でしょう。
しかも(採用で決め手となった)人事の評価シートも、面接官が主観的に書いただけ。あとは学歴やSPI、面接時の評価をランク付けするくらい。しかも日本の賃金制度において指定される業務の範囲はとても曖昧。その中で人事が付ける相対的な評価を元にしてHR Techが機能するのかなとも思う。
――一方、HR Techの台頭で人事の「リストラ」は発生すると思いますか?
城: HR Techが導入された結果、人事部門で人が要らなくなるケースは出てくると思います。2000年代初頭、大手企業の人事部門で“大リストラ”が起きました。社員に1人1台PCが行き渡り、個人で稟議の申請などをできるようになって会議の書記も要らなくなったからです。
当時、大企業では総務や人事から社員を大量に減らし違う部門に割り振りました。それでも(強い人事権を持つ)本体の人事の中枢は盤石でした。だから当時は問題なかった。
今回、(PCでなくHR Techが普及して)同じことがやれるかどうか。「俺の長年の経験が〜」などと言っている人事部長とかは要らなくなる。そういう人が「AIがこれからは判断するから僕は身を引きますよ」といえるかどうか。
城: 人事とは基本的に書いて字のごとく「人に仕える」部署です。いかにして従業員の満足度を上げるか、思考を柔軟にするべきです。今までは経験や勘に頼り、先輩の作ったルールに従っていれば良かった。それが変わってしまう。
今後はHR Techも使った上で、従業員のためになるよう頭を柔らかくすべきです。AIが決めたからあなたの配属先はここですと(安直に)言わず、希望が合わない人には相談したりしてマッチングさせていく。
人手不足の今、仕事はどんどんシステムに置き換えるべきです。AIが要らないといった仕事はなくすべきだし、必要な仕事に人手を振り替えていく。日本はどんどん働き手がいなくなります。省力化で社会全体が良くなる。
結局、HR Techが魔法になるか無用のものになるかは人事次第です。HR Techからすごい結果を突き付けられたら、ほとんどの人事部長は否定するでしょう。自分の権威の否定になるから。そうすれば無用のものになってしまう。でも、生かして魔法として使っていく会社もある。まさに使い方次第なのです。
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