え!? これクラウンだよな?池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)

» 2018年06月25日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]

変わらなければならない理由

 さて、15代目クラウンの成り立ちを理解するためには、やはり背景の理解が重要だ。クラウンはこれまで、ショーファー向けのマジェスタ、法人向けのロイヤル、パーソナル向けのアスリートの3つのラインで構成されていたが、今回これを1本化した。

 すでに2000年代始めからクラウンは毎年オーナーの平均年齢が1歳ずつ上がっていくという悩みを抱えていた。アスリートシリーズの登場で多少はユーザーの高齢化に歯止めがかかったのだが、トヨタが考える水準には到達できておらず、今世代で一気にそれを何とかしたいと考えた。

デザインのディティールが強すぎて男性権威の象徴と言われてしまった旧型クラウン デザインのディティールが強すぎて男性権威の象徴と言われてしまった旧型クラウン

 主査の説明によれば、調査の結果、クラウンにはファンも付いているが、同時に悪い印象もあったのだという。特にロイヤル系はパトカーや運転手付きの法人車両のイメージが強いらしい。重厚長大、役所や財閥の類に共通する古く保守的かつ権威的なイメージだ。20年代に向けてそれらを振り払って、もっと新鮮味のある製品へと脱却しなくてはならない。このままいけば販売台数はジリ貧で、いつか臨界点を迎えてしまう。もはや既存オーナーに拘るばかりに、キープコンセプトで開発している段階ではない。

 そう問題を定義した上で、開発陣が決めた改良の重点ポイントは2つある。1つは歌舞伎の隈取のようなフロントデザインのアクの強い押し出しだ。販売現場からはこれが男性権威の象徴のように見えるのだそうで、せっかく気に入ってくれたお客さんがいても奥方の拒否権発動で契約非成立ということがあるらしい。

 もう1つは、日本専売(例外的に中国では販売している)のドメスティックカーとして、追い上げる競合もなくぬるま湯の中にいたクラウンの運動性能を世界で戦えるレベルに高めることだ。端的に言えば、ベンツやBMWと互角以上に戦えるクルマを目指した。幸いなことにシャシーもエンジンもTNGAへの移行世代となり、特にシャシーはFR用TNGAの頭出しになる。トヨタは当然このシャシーをレクサスにも適用していくだろうから、世界レベルを狙うという目標も承認されやすかったに違いない。

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