――中国のロボット技術の進歩をどう見ているか。
日本に近づいてきている部分もあるし、なかなか追い付かない部分もある。ロボットを適用する範囲は日本よりも広がってきていて、その意味では脅威だ。スマートフォンをあれだけ大量に作れるのは中国しかない。かつては米国に留学した中国人は米国で仕事を見つけていたが、最近は中国に戻っても高給で働ける場があるので、優秀な技術者が中国に滞留するようになってきた。
日本の大手の自動車会社や、半導体製造を手掛ける企業は徹底的に生産技術を磨いているからそう簡単には負けないだろうが、中規模なところは怪しくなっている。中国では家電製品やスマホ製造の自動化が日本よりも進んでいる。日欧米の装置メーカーが中国に最新の製造装置を売るので、かなり良い製品ができている。その中で中国の技術がどんどん上がってきている。
――AI内蔵のロボットは何ができて、何がまだできないのか。
ディープラーニング(深層学習)という画期的な方法により、パターンを覚えさせるのではなく、コンピュータが人間には考えつかないような論理を導き出してくれるようになった。だから囲碁などでは人間には考えつかないような手を打ってくる。しかし、会話や翻訳はできても、物理的作業、つまり実際の動作が入ってくると途端に難しくなる。どうやってモノをつかめるのかを理解はできても、実際にどうつかむのかということになると2歳の子どものレベルで、まだまだ未熟なのが現状だ。
――AIを内蔵したロボットが出現すると、人間の仕事を奪い、失業者があふれるのではないかという指摘もあるが。
マスコミが過剰に書いているだけで、それほど急激に人間の仕事を奪うことはない。ただ、通訳の仕事や、清掃など一部の単純労働はロボットに置き換わるだろうし、現にすでに起きている。しかし、AIを搭載したロボットの登場で街に失業者があふれるというような事態にはならない。ロボットにより単純な仕事から解放された労働者は、より付加価値の高い職に就けるようにすればよいのだ。
――ロボットが人間の能力を上回る「シンギュラリティ」が近い将来に到来するのではないかとも言われているが。
一生かかってもそこまでには行きつかない。少なくとも私の周りの科学、技術系の人には、そう言っている人はいない。囲碁や将棋など狭い分野では、人間の能力を上回ることはあっても、ロボットに人間の代わりをさせようと思って取り組んではいない。
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