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「シンギュラリティには一生行きつかない」 安川電機・津田会長に聞く「ロボット産業の未来」「外国人労働者受け入れ」は人手不足解消の解じゃない(5/5 ページ)

» 2018年06月28日 09時00分 公開
[中西享ITmedia]
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「ロボット導入」により人間の生産性も上がる

 以上が津田会長へのインタビュー内容だ。AIを内蔵した最先端のロボットを普及させる以前に、建設現場などにある「3K職場」の改善が先決だという津田会長の強い思いが伝わってきた。

phot 溶接、部品の搬送、組み立て、研磨など幅広い用途に使われるMOTOMAN-GP25(安川電機提供)

 この数年、AIやコンピュータの進歩により、人間の仕事が奪われて失業者が多く出るという衝撃的な予測が多く出されている。だが、現状ではホテルの受付、掃除、警備補助、いやしのためのコミュニケーション程度にしか実用化されていない。一日でも早く、「3K職場」に導入できるロボットを実用化してもらいたい。

 中小ビルの建設現場でよく見かけるのが、コンクリートを作るため、作業員がセメント袋を担いで運ぶ光景だ。1971年までは一袋50キロもあったが、それが40キロになり、96年からは25キロまで軽量化された。それでもこの重い袋を1日に何回も担ぐのは「きつい」「危険」な重労働だ。

 スペースのない、狭い物流現場では、フォークリフトも動かしにくく、ロボットは稼働させにくいといわれている。だが、こうした現場にこそ、積極的にロボットを導入して作業員の過重労働をなくす必要があるのではないだろうか。

 放射能に汚染されて人間が近寄れない原子力発電所における内部の撮影、修理などはロボットにしかできない作業だ。実際には何種類もの国産ロボットを試したものの、ガレキが散乱した狭い空間のために故障が多く、目立った成果は挙げられていない。組み立てラインで使う日本製のロボットは世界でも有数の技術を誇る一方、原発のような極限的な現場で使えるロボットとなると、外国製でも使えるものはないという。

 こうした危険な作業現場にロボットを導入することで、人間が身体を壊さず長期的に働ける技術や仕組みが実現すれば、「ニッポン株式会社」の生産性も確実に上げられる。

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