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二宮和也主演「ブラックペアン」で話題の手術支援ロボット 直腸がん手術「第一人者」に聞くロボットとAIが変える「医師の働き方」(1/5 ページ)

» 2018年06月15日 09時00分 公開
[中西享ITmedia]

 二宮和也が「オペ室の悪魔」と呼ばれるダークヒーロー役を演じる人気テレビドラマ「ブラックペアン」に登場する手術支援ロボットが、いま日本の医療施設に普及しようとしている。

 高精度の3D内視鏡を備え、超精密な手術が可能な手術支援ロボット「ダビンチ」(da Vinci Surgical System)は、米Intuitive Surgical(インテュイティブ・サージカル)社が開発した。従来の開腹、腹腔鏡手術の機能を提供しながら、数ミリほどの小さな切開部を通して手術が可能だ。外科医が3Dモニターを見ながら4本のアームを手術部に挿入し、まさに人間の手のように自由自在に操作できる。精緻な人体解剖図を作成した15世紀の発明家レオナルド・ダ・ビンチにちなみ、「ダビンチ」と名付けられた。

 大腸がんの中でも難しいといわれる直腸がん手術を、「ダビンチ」を駆使して、5年で600件以上、手掛けてきた直腸がん手術の第一人者である絹笠祐介・東京医科歯科大学消化管外科学分野教授に、ロボット手術の現状と課題について聞いた。

phot 「ダビンチ」を使った手術風景(東京医科歯科大学提供)

日本はスタートラインに立ったばかり

phot きぬがさ・ゆうすけ 1998年東京医科歯科大学医学部卒業。01年国立がんセンター中央病院外科レジデント、06年静岡県立静岡がんセンター非常勤医師、10年同センター部長、17年東京医科歯科大学大学院、消化管外科学分野教授。東京都出身。44歳。

――「ダビンチ」を使った手術について、保険の適用範囲が広がってきているが。

 診療報酬改定により、2018年4月から胃がん、肺がん、食道がん、心臓、直腸がん、膀胱がん、子宮がんなど12の術式において、ロボット支援手術に対して保険が適用されることになった。保険適用になる前は、9割以上が前立腺がんなど泌尿器科系の手術に「ダビンチ」が使われていた。また、自由診療においては直腸がん、胃がんの一部で実施されていたものの、数は少なかった。

 ロボット手術拡大の流れは世界中で加速していて、もはや止められない。日本では、今回の保険適用の拡大によってロボット手術がようやくスタートラインに立ったところという感じだ。

phot 診療報酬改定により、12の術式でロボット支援手術が保険適用になった(東京医科歯科大学資料より)
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