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二宮和也主演「ブラックペアン」で話題の手術支援ロボット 直腸がん手術「第一人者」に聞くロボットとAIが変える「医師の働き方」(3/5 ページ)

» 2018年06月15日 09時00分 公開
[中西享ITmedia]

従来の手術よりも神経障害が減らせる「ダビンチ」

――これまでの開腹、腹腔鏡手術と比較しての違いは。

 ロボットでないと手術ができないわけではないし、ロボットを使ったからといって何でもできるわけでもない。ただし、手術に関してはちょっとした底上げになる。腹腔鏡で9割できるのが、ロボットだと9割2分できる。腹腔鏡だと神経障害が10%起きるのが、ロボットなら4%くらいまで低減できる。

 また、腹腔鏡の場合は医者の得手不得手の差が大きく出てしまう。一方、ロボット手術では、長い目で見ると、この技量の差をなくすことができる。従って、教育の均てん化に役立つと思う。

phot ロボット手術は神経障害を減らすことができる(東京医科歯科大学資料より)

――指導する立場になってみて、今までと違う点は。

 上級の指導医になってくると、難しい手術を求められる。自分が何とかしてあげなければならないので、責任を強く感じる。「あの先生なら何とかしてくれる」という思いで来る患者や、ほかの病院では対応できない患者が紹介されてくる場合もある。当然ながら、立場が上がってくると責任が重くなるのだ。

phot 「人工肛門」と言われた患者も絹笠教授を頼って来院する(東京医科歯科大学資料より)

「触覚」がないため事故のリスクも

――「ダビンチ」を使って手術をすると、手で患部を触っている触覚がないため、トラブルが起きることもあるそうだが。

 確かに、触覚がないため、ロボット手術を経験して特性を十分に理解することが大切だ。経験を積めば、触覚がないことがデメリットにはならない。ロボット手術の有効性については議論されているところだが、安全性についてはそれほど問題ないことが、すでに世界的に報告されている。ロボットの事故が特に多いというわけではないものの、ロボット手術による事故はある。それは触覚がないことによるものもある。

 医師が初心者の場合、触覚がないため、見えないところで臓器を損傷するリスクがある。見えていないところで器具が当たり、ぶつかっても分からないためで、見えないところでの動きも理解して手術を実施しなければならない。慣れない医師の場合は、画面全部を見ることも難しく、ぶつかっていても気付かないことがある。

 テレビドラマ「ブラックペアン」では、「ダーウィン」と呼ばれる手術支援ロボットが使われる想定になっているが、手術中にアームの先に取り付けた鉗子が動かないトラブルが発生して大量出血が起きる場面があった。直接、目で手術部分を見るのと、画面を通して見るのとではかなりの違いがあり、それを十分認識して手術できるだけの技量が求められる。

phot 「ブラックペアン」では、ダビンチではなく「ダーウィン」と呼ばれる手術支援ロボットが使われている(TBSのWebサイトより)

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