――しかし、唐突に「自分にしか発揮できない価値」を問われると悩んでしまう人もいます。その場合は、どのように模索していけばいいのでしょう?
ただ目の前の仕事をこなすのではなく、その仕事を「なぜやっているのか?」を見つめ直す必要があると思います。
例えば、単純なデータ入力の作業であっても、なぜこのデータを入力しているのかを考えてみる。根幹にあるゴールにより早くたどり着くために、機械がやったほうがいいことがあるのならまかせてしまう。そうして削り出した時間で、なにか他の価値を生み出す方向に動けばいいんです。
与えられたタスクに追われながら、「このまま置き換えられたらどうしよう」と悩むのではなく、「なぜやるのか?」について発想を膨らませてみる。そうすれば、新しい景色が開けてくるはずです。
――しかし、純粋に「目の前の仕事を徹底的に極めたい」という職人気質な人もいます。その点はいかがでしょうか?
職人的な想いを持っているのはすばらしいと思います。ただし一定の柔軟さは必要。私自身、受付の仕事が大好きだからこそ、「手放す」あるいは「変える」勇気を持つことができました。
――好きだからこそ、手放す……簡単なことではありません。橋本さんのように「手放す勇気」を持つにはどうすればよいでしょうか?
厳しいことを言うようですが、好きで今の仕事にしがみついた結果、将来何かを失わざるを得ない状況に直面するということは、誰にでも起こり得るんだろうと思います。その理由はAIなのか、テクノロジーなのか、自分の年齢なのか、はたまた会社都合なのか、それはさまざまです。
世の中は、変わっていくもの。であれば、職業のあり方だって変わっていかないといけない。愛するがゆえに、変化を受け入れる。これからはまさにそういう時期が来るんじゃないかと思います、どんな業界にも。時代の変化を他人事に感じていたのでは、そこで終わってしまいかねない。
――時代の変化を自分ごと化するには何が必要なのでしょうか?
そう言う私も、最初からそんなふうに時代の変化を自分ごと化できる人ではありませんでした。純粋に、誰かに恩返しをしたいという気持ちで、今の事業を始めたわけです。
でもこの「恩返しをしたい」という想いが強いばかりに、私は時代の変化を受け入れられたのかもしれませんね。
(取材・文:向晴香、岡徳之<Livit>)
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