#SHIFT

働き方改革を「無理強い」する企業に起きる大問題業績が伸びない可能性も?(2/2 ページ)

» 2018年07月06日 18時36分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]
前のページへ 1|2       

働きがいのない企業は「業績」も伸びない?

 同社の見解をまとめると、「働き方改革」を進める際、管理職は丁寧なコミュニケーションによって従業員が前向きに働ける下地を整えておく必要があるといえる。だがこの取り組みには、管理職の業務が増大して不満が出る可能性も伴うのではないだろうか。

 この点について岡元社長は「一連のコミュニケーションを行うに当たり、一時的に管理職の負担が増えてしまうことは事実だが、いったん乗り越えれば職場の雰囲気や生産性は上向くはずだ」と解説する。

 さらに、こうした“生みの苦しみ”を克服した企業には、目に見える成果も付いてくるという。同社が「働きがいのある会社ランキング」の参加企業198社の業績を調べた結果、「働きがいがある」と認定された企業の2016年度〜17年度の売上高の平均伸び率は33.9%で、認定されなかった企業(12.0%)を大きく上回ったとしている。

photo 「働きがいがある」と認定された企業とそうでない企業の売上高の成長率の差。「ベストカンパニー」は前者、「ノンベストカンパニー」は後者を指す

「いきいき職場」は急成長

 同社はこの結果をさらに細かく分析するため、ランキングの参加企業の従業員にアンケートを実施。「働きやすさ」(労働環境の整備状況、ワークライフバランスの充実度、福利厚生)と「働きがい」(経営層への信頼度、仕事への誇り、職場の連帯感)の度合いを数値化した。

 その上で、各企業を(A)働きやすさと働きがいが共に高い「いきいき職場」(71社)、(B)働きやすさは低いが、働きがいは高い「ばりばり職場」(31社)、(C)働きやすさは高いが、働きがいは低い「ぬるま湯職場」(19社)、(D)どちらも低い「しょんぼり職場」(77社)の4種類に分類した。

 各タイプの売上高を分析したところ、対前年伸び率の平均値は(A)「いきいき職場」が43.6%でトップ。以下、(B)「ばりばり職場」(22.0%)、(D)「しょんぼり職場」(6.5%)、(C)「ぬるま湯職場」(6.0%)と続いた。

photo 4つの職場タイプ

 結果を踏まえ、岩佐コンサルタントは「両者に因果関係があると断言はできないが、業績を向上させる上で重要なポイントは『やりがい』にあることは明白だ」と強調。「働きやすさ」を高めるだけでは成長につながらないとし、「経営層と現場層が信頼関係を築き、『やりがい』を高めることこそがビジネス界に必要だ」と繰り返し説いた。

photo 「働きやすさ」や「やりがい」を高める一つの要素だという

「ぬるま湯職場」に要注意

 岡元社長は最後に、「働きやすさ」は高いが「働きがい」は低い「ぬるま湯職場」に言及。「従業員がモチベーションを駆り立てられるような事業を展開できていないのに、『働き方改革』によって早く帰れたり福利厚生が充実しすぎていたりする企業は危険だ」と警鐘を鳴らした。

 「やる気のない社員を量産する一方で離職率はかなり低くなり、周囲から“ホワイト企業”に映ってしまうが、生産性は低い」と指摘し、「本当に健全な企業は、それなりに人材の新陳代謝があるものだ」と結論付けた。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.