加えて問題なのは、密輸と密漁の蔓延(まんえん)である。台湾は07年以降、シラスウナギの輸出を原則として禁止した。さらに現在は、独自にニホンウナギを「極めて絶滅危機の高い種(Critically Endangered)」に指定している。だが実態は、台湾から香港を経由した密輸が今も続いているのが現実だ。
「シラスウナギが台湾から香港へと非合法に密輸され、香港経由で日本に持ち込まれるという闇ルートが成立してしまっている」ことは、日本の養鰻業界の代表も公に認めている(2017年7月11日付の水産経済新聞における白石嘉男日本養鰻漁業協同組合連合会会長兼全日本持続的養鰻機構会長の発言より)。
17年のシラスウナギ輸入の約7割は香港からのものである。フィリピンからの輸入はビカーラ種という二ホンウナギとは異なったウナギであると考えられるため、ニホンウナギの稚魚は全て香港から輸入されているものと考えられる。
財務省貿易統計によれば、17年12月〜18年3月に池入れされたシラスウナギ5278キロのうち、99%の5211キロは香港から輸入されたものだ。
ワシントン条約事務局が6月2日までに公表した報告書は、14〜15年漁期から16〜17年漁期の間、養殖池に入れられたシラスウナギの57〜69%が「違法もしくは無報告あるいは違法取引によるものと推定される」と指摘している(共同通信、北海道新聞2018年6月2日付「ウナギ稚魚、7割違法漁獲」より)。
違法が存在する状態にありながら、香港当局も日本の当局も、シラスウナギの密輸を防止する有効な対策を何ら講じていない。加えて世界自然保護基金(WWF)の調査においても、ウナギは日本の輸入水産物のなかで最もIUU(違法・無報告・無規制)漁業由来のリスクが高いと指摘されている。
こうした違法行為には反社会勢力が関与している事例が存在している。例えば17年8月、高知地裁は密漁事件で県漁業調整規則違反に問われた暴力団員ら3人に対して懲役5カ月執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。この判決は確定し、高知地検幹部は「証拠上、密漁が暴力団の資金源だと明確になった」としている(朝日新聞2018年1月11日)。
密漁・密輸の蔓延という事態は、水産物の生産履歴を透明化する「トレーサビリティー制度」が整備されていない日本においても、際立ってひどい状態であると言わざるを得ない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング