どこが魅力なの? 知られざる「風呂なし」物件の世界水曜インタビュー劇場(銭湯公演)(2/6 ページ)

» 2018年07月25日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

風呂なし物件ツアーに参加している人たち

土肥: 総務省が出している資料によると、賃貸物件で、風呂なし物件は2.8%ほど。この数字を見て「まだそんなにあるのか」と思う人もいるでしょうし、「もうそんなに減ったのか」という人もいるでしょう。風呂なしの部屋に住んでいるということは、近所の銭湯に通っていると思うのですが、銭湯の数も減っていますよね。東京都のデータによると、50年前の1968年には2687軒あったのですが、2017年は562軒に。

 風呂なし物件は少ない、銭湯も減っている、といった状況のなかで、それでも風呂がない部屋に興味をもっているのはどんな人たちなのでしょうか?

東京都内の公衆浴場数(出典:東京都)

鹿島: その前に、私たちが取り組んでいることを説明させてください。私は銭湯が大好きなのですが、その公衆浴場がどんどん減少している。そうした状況のなかで、何かできないかと考えました。当社は不動産の仲介を手掛けているので、その知見を生かすことができるかもしれない。ということで、数年前から「風呂なし物件ツアー」を開催しているんです。

 風呂なし物件を2つ見て、銭湯を見る。その後、風呂なし物件を2つ見て、銭湯を見る。1日に4物件、2銭湯といった感じですね。どんな人が参加しているのかというと、20〜30代が多くて、共通していることは「銭湯が大好き」なこと。これまで、大田区の蒲田、学生が多い早稲田、観光客が多い上野などを回ってきました。

土肥: ツアーに参加した人からはどんな声がありましたか?

鹿島: 何も知らされずにいきなり「風呂なし物件」と聞くと、「ワタシは無理」と思う人が多いかもしれませんが、実際に見ると「意外と広いなあ」とか「想像以上にきれい」といった声が多いんですよね。トイレが付いていて、風呂がないといった物件もあるので、そうした部屋を見たときには「ここだったら自分は住めるかも」といった意見もよく聞きます。

 あと、バランス釜が付いた物件を紹介することも。浴槽の横に給湯器が設置されている風呂のことですが、使い勝手が悪いことがあるんですよね。特に、寒い冬。すぐに温まりたくても、お湯を沸かすのに50分ほどかかることも。カチカチと操作してうまく沸かせたと思っていたのに、火がちゃんとついていなくて水のままのことも。こうした行為が面倒だと感じる人は、家の近くに銭湯があったほうが便利かもしれません。

風呂なし物件ツアーでバランス釜を見に行くことも(出典:東京銭湯ふ動産)

 ツアーを始める前、風呂なし物件を見たことがない人は心理的なハードルが高いのですが、ツアー終了後にはそのハードルが低くなっている。これまで部屋に風呂がないなんて考えたことがなかった人でも、「引っ越しする機会があれば、選択肢のひとつに『風呂なし物件』もアリかな」といった声を聞くことがあります。

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