埋めたり捨てたりするのはかわいそうなので食べてあげる――。ストロングスタイルの愛情表現は33歳になった現在も変わらない。
「深海からせっかく水族館までやってきた魚を、標本にもせずに捨ててしまうのは失礼だと思っています。できれば(最後の)活躍の場を設けてあげたい。魚の特徴をお客さんに伝える方法は水槽で飼って見せるだけではありません。その味を体験して紹介することも1つの方法だと思っています」
2006年に竹島水族館に入社した三田さん。最初にチャレンジしたのは、シャコとダンゴムシをかけ合わせて大きくしたような奇怪な深海生物、オオグソクムシだ。
「身の味はシャコと同じようなものです。でも、オオグソクムシは強烈な臭いで敵を追い払う習性があり、個体によってはその臭いが強いものがあります。言葉では伝えにくい臭いです。また食べたい、とは思わない生物ですね」
いきなりの大物への挑戦で「よっぽどのものではない限りは食える」と感じた三田さん。一方で、館内でお客さんの声を聞いていて印象深いことがあった。特に年配の人は魚が泳ぐ姿を見て、「おいしそう」「10人前は刺身が取れる」などの会話をしているのだ。「この魚は食べられるの?」と質問されることも少なくない。
三田さんはひらめいた。絶対に食べられなさそうな生物をあえて調理して食べて伝えたら、他の水族館にはない面白いコンテンツになるはずだ、と。
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