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「Amazonとは違う世界を」 古書店に眠る本を“検索”で蘇らせた元リコー社員熱きシニアたちの「転機」(4/5 ページ)

» 2018年08月20日 08時30分 公開
[猪瀬聖ITmedia]

「黒船Amazon」上陸 戦略見いだせず

 1年目の年収が5分の1に激減したのは想定内。サイトの利用者数と古書店の加盟数は順調に伸びており、ひとまず安心だった。

 ところが、これからという時に、想定外の大きな出来事が起きた。Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)の日本市場参入だ。楽天もネット書店に本腰を入れ始めた。スーパー源氏から古書店が次々と脱会し、経営は一転、大ピンチに見舞われた。

 「Amazon(アマゾン)や楽天、ヤフーと同じ土俵では絶対に勝てない。でも、どうしたらいいか分からない。戦略が見いだせなかったのが一番辛かった」と、河野さんは当時の心境を吐露する。「会社が潰れるかもしれない」と妻に弱音を吐いたこともあったという。

 しかし、諦めはしなかった。事務所を閉めて自宅で仕事をするなどコスト削減を急ぐと同時に、アクセス解析や仕入れ支援、送料割引など、加盟店向けの新たなサービスを打ち出した。また、古書店を開きたい個人向けに古書店開業支援セミナーも開設。こうした矢継ぎ早の策が奏功し、加盟店数は再び増加に転じた。

phot 「今が一番、勢いがあるんですよ」と熱っぽく語る河野さん

 程なくして、三省堂書店から「一緒にやりませんか」と声が掛かかった。新刊書店大手の三省堂書店もまた、ネット専業書店の台頭で守勢に立たされ、新規事業を模索していた。神保町本店にスーパー源氏のコーナーを設け、加盟店の古書を三省堂書店でも売れるようになった。古書を新刊書籍と同じように単品管理するためのバーコード発行システムも河野さんが請け負って構築した。

 さらには、取引先の1社だった、公式ジャニーズグッズの中古販売を手掛ける「ジャニランド」を三省堂書店に紹介するなど、他社との協業や事業の多角化を推進。それらが実を結び、しばらく横ばいだった会社の売上高が、2017年、大幅に伸びた。

phot 三省堂書店・神保町本店4階には古書コーナー「三省堂古書館」がある
phot 神保町の書泉グランデでは「オカルト古書フェア」を実施中だ
phot 書泉グランデの担当者に聞くと「絶版になった本を探しに来店されるなど引き合いが多い」とのこと
phot 水木しげるの著作など貴重な本も並んでいた

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