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「Amazonとは違う世界を」 古書店に眠る本を“検索”で蘇らせた元リコー社員熱きシニアたちの「転機」(3/5 ページ)

» 2018年08月20日 08時30分 公開
[猪瀬聖ITmedia]

退職伝えた上司に「お前は辞めた方が良いよ」

 やりがいと自信を得た河野さんは、スーパー源氏の運営にますます身が入った。「自分のアイデアをすぐに実行に移せるというサラリーマンでは味わえない面白さがあったし、自宅の小さな部屋からスーパー源氏を通じてたくさんの人とつながっているという興奮もあった」と振り返る河野さん。月に十数万円を稼ぐこともあったという。

 ただ、当時の河野さんにとって、スーパー源氏はあくまで小遣い稼ぎのサイドビジネス。子どももまだ小さく、家のローンも返済が始まったばかり。「会社を辞める考えは全くなかった」。

 しかし、転機は意外と早く訪れた。昼間、会社で長時間働きながら、帰宅後は深夜までPCに向かい続ける生活は、40歳を過ぎた河野さんには負荷が大きすぎた。体調を崩し、階段を上るとすぐに息切れ。突然、意識を失うこともあった。出張中、1日に何度も意識を失いかけ、「これは真剣にまずい」と思ったという。

 そんなある日、小渕恵三首相が脳梗塞で倒れるという衝撃的なニュースが流れた。「今の生活を続けたら、自分も近い将来、過労で死ぬ。会社を辞めるかスーパー源氏をやめるか、道は2つに1つだが、スーパー源氏をやめたら一生後悔するに違いない」と考え、会社を辞める腹を固めた。

 退職の意思を上司に伝えた時のことは、今でもよく覚えている。引き留められるだろうと覚悟していたら、あっさりと「お前は辞めた方がいいよ」と言われた。辞める直前は、大した権限も与えられずにただ仕事が増えるばかりで、正直やる気を失っていた。上司もそれに気付いていたのかもしれない。そんな上司の最後の一言が印象に残っている。「お前は行くところがあっていいな」。かくして河野さんは、20余年のサラリーマン生活にピリオドを打った。2000年9月、44歳の時だった。

phot 起業後、社員旅行で赴いた宮古島にて(右が河野さん)

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