この10月、新たなサービスを立ち上げる。仮想現実(VR)技術を使って、実在する古書店の棚をスーパー源氏の中で再現し、その棚画像を見ながら直接、本を注文できるサービス、名付けて「見れるジャン 買えるジャン」だ。
このサービスを使えば、全国各地の加盟店が所蔵する「お宝」を見つけることも可能だ。河野さんは「書店の棚に並ぶ本の背表紙をながめながら、新たな本と偶然出合った時の喜びや、本を探す楽しさを再現することを狙った」と説明し、「新しい書店のかたちを提案したい」と意気込む。
実は、「見れるジャン 買えるジャン」は、河野さん自身が2013年に東京都内に初の実店舗を出して失敗した経験をヒントにした。転んでもただでは起きないたくましさも、河野さんは持ち合わせている。中小企業庁から助成金を得て開発を進め、すでに特許も出願したという。
「結局は、そこで見つけた本をアマゾンで買われるだけと言う人もいるが、アマゾンで売っていない本を置けばいい。それに、アマゾンや楽天は便利だけれども、実店舗のような本を探す楽しさは得られない」と、新サービスの成功に自信を見せる。一方で、「こういう仕組みは大手だったらまねできるだろうが、零細な古書店ではなかなか難しい」とも述べ、そこに紫式部の存在意義や果たすべき役割があることを強調する。
「ねっ、これ面白いでしょ」と開発中の「見れるジャン 買えるジャン」の画面をこちらに見せながら、河野さんはまた、いたずらっぽく笑った。
猪瀬聖(いのせ ひじり)
慶應義塾大学卒。米コロンビア大学大学院(ジャーナリズムスクール)修士課程修了。日本経済新聞生活情報部記者、同ロサンゼルス支局長などを経て、独立。日経では、食の安全、暮らし、働き方、ライフスタイル、米国の社会問題を中心に幅広く取材。現在は、主に食の安全やライフスタイル、米国の社会問題などを取材し、雑誌などに連載。また、日本人の働き方の再構築をテーマに若手経営者への取材を続け、日経新聞電子版などに連載している。著書に『アメリカ人はなぜ肥るのか』(日経プレミアシリーズ、韓国語版も出版)、『仕事ができる人はなぜワインにはまるのか』(幻冬舎新書)。日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート。
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