「健常者の人たちの中で私はもまれて生きてやる」(松田さん)。多くの理不尽な現実に立ち向かいながら、自分の働く意義を見いだしていった2人。障害者雇用が国によってゆがめられていた今回の問題については「憤りを通り越して『やっぱりそうなの』って思った。私の見てきた世界は幻じゃない、やっぱり現実だった」(松田さん)、「今まで隠してきたことが隠せなくなったと思った」(小澤さん)とみる。
特に彼女たちが問題視するのが、雇用率水増しの背景にある官庁が障害者を法定雇用率達成のための「数字」としてしか見ない姿勢だ。小澤さんがデンマークを訪れたときのこと。現地の人に法定雇用率を聞いたところ「そんな数字はない」と返された。会話していても「あなたの障害は何?」と明るく聞いてくる。そもそも障害者が特別扱いされていない国だと感じた。
「一方で日本には(法定雇用率という)数字があること自体、悲しい。そうまでしないと本当の共生社会にならないのか。私は数字としてみられたくない」(小澤さん)。松田さんも「現実は、私たちは数字。以前いた会社でも『辞めないでね。法定雇用率を下回ったらペナルティーのお金を払わなくてはいけないから』とよく言われた」と振り返る。
松田さんのかつての勤め先がまともな仕事を彼女に用意しようともしなかったことについて、小澤さんは「目先の問題しか考えられない人が多いのは悲しい。今の日本は健常者だけでは立ち行かないほど生産性が下がっているのに」と指摘する。「障害は人によって全く違う。どんな仕事なら障害者が活躍できるか企業や官庁の方が考える努力をすれば雇用は増えるはず」。
「障害者雇用の水増し」で露呈する“法定雇用率制度の限界”
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