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» 2018年08月30日 08時30分 公開

障害者はただの「数字」なのか:障害者雇用水増しに「怒りより痛み感じて」 車いすの歌姫の叫び (3/5)

[服部良祐,ITmedia]

歌にモデルもこなすキャリアウーマン

 もう1人のタレント、小澤綾子さん(35)は1万5000人に1人がかかるとされ徐々に筋力が低下する難病、筋ジストロフィーのため手足に障害がある。新卒で入った外資系大手企業で人事を担当する、車いすのキャリアウーマンだ。一方で5年ほど前からシンガーソングライターやモデル、大企業向けのダイバーシティ(多様性)の研修の講師としても活躍するマルチタレントでもある。

photo キャリアウーマンに歌姫の顔も持つ小澤さん

 小澤さんが歌うのは同じ病気を持つ知人が作った曲や、自分の鼻歌から作ったというオリジナル曲だ。車いすの女性2人とユニットを組んで活動している。デンマークでは初の海外公演も果たした。最近では大阪でバリアフリーをテーマにしたファッションショーにも出演。活動領域は止まるところを知らない。

 勤務先でもチームリーダーを任され、仕事量も昇進スピードも健常者の同僚たちと何も変わらないという小澤さん。しかし、学生時代は孤独を感じて悩むことが多かった。10歳の時に筋ジスの症状が足に出始めると、「変な歩き方が移るから来るな」と友達からいじめられた。当時はまれな難病だったために病院に行っても正しく診断されず、医師からは「個人差でしょう」とまで言われた。

 大学時代に病名が判明して「あと10年したら車いす、その後は寝たきり確定」と医師に告げられた。「自分の人生は何なのか。できることが無くなっていく私に生きる意味はあるのか」とまで思い詰めた。

 特に理不尽な扱いを受けたのは大学3年時の就職活動だった。大学では成績優秀で面接での受け答えにも自信があった。しかし受けた企業の選考にはなかなか通らない。面接では「小澤さんの病気の人はうちで採ったことがないから難しい」と断られたり、「できないことをすべて挙げてください」「何歳まで働けますか」と聞かれたりし、病気の説明ばかりさせられた。

 最終面接まで進み、内定の手応えを感じていた会社からも「小澤さんの病気では(採用が)難しいって上が言ってた。ごめんね」と採用担当者に電話で断られた。「ショックだった。みんな私の病気のことしか見ていない」(小澤さん)。

 その後、ゼミの教官に障害者手帳を取得するよう言われ、気が進まなかったが取ったところ内定が出るようになった。企業が法定雇用率を達成したいがために、手帳を持っている障害者を取ろうとしていたのだろうか。

 ある日、就職説明会で最初は受ける気のなかった今の会社のブースにふらっと入ったところ「うちはいい意味でも悪い意味でも障害者を特別扱いしない」と言われた。「できないことはあまり聞かれず、私のできること、得意なことを聞いてくれた。それがうれしかった」(小澤さん)。他の会社の内定を蹴って入社を決めた。

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