過熱する「加熱式たばこ」競争が、“個人情報争奪戦”になってしまう理由スピン経済の歩き方(5/5 ページ)

» 2018年09月18日 08時07分 公開
[窪田順生ITmedia]
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たばこの未来は明るくなさそうだ

 筆者も若いころは喫煙者だったが、そのきっかけは、愛煙家の方たちが主張する「味」や「心が落ち着く」なんてことではなく、漫画『ビー・バップ・ハイスクール』のようなヤンキー漫画、『ルパン三世』のようなアニメ、そしてタランティーノなど海外の映画を見て純粋に「かっこいい」と思ったからだ。

 事実、中高生が喫煙してしまう理由を調査すると、必ずトップに上がるのが「好奇心」である。

 だが、近年の逆風で「たばこ」に好奇心を抱く子どもも減っている。島根県の高校生を対象に「初めてたばこを吸ったきっかけ」を調査したところ、1998年は「遊び(好奇心から)」と回答したのが30%をゆうに超えていたのに、2010年には5%を切っている。もはや現代の若者たちにとって、「たばこ」は「かっこいい」「なんか面白そう」などと好奇心を抱く対象ではないのだ。

 こういう時代の流れに加えて、IQOSやglo、プルーム・テックのユーザーが増えていけば、未来の若者たちにとって、「たばこ」は、こんな「かっこ悪いイメージ」になってしまうかもしれない。

 「個人情報と喫煙習慣を吸い上げられるデバイスで、気がつけばニコチン中毒にさせられるやつでしょ」

 いずれにせよ、何かとつけて「自由」や「権利」を主張される愛煙家の方たちが、大企業に個人情報をむしり取られたあげく、データを吸い取るデバイスによって管理され始めているとしたら、これほど皮肉な話はない。

 加熱式たばこ愛好家が主張する「紙巻きたばこより健康リスクが少ない」「匂いもしないので禁煙店で吸ってもヘッチャラ」についても、アメリカ食品医薬品局(FDA)をはじめ、多くの研究者が否定的だ。

 「たばこの未来」は、CMで触れ回れているほど明るくはなさそうだ。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで200件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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