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» 2018年09月18日 08時07分 公開

過熱する「加熱式たばこ」競争が、“個人情報争奪戦”になってしまう理由スピン経済の歩き方(4/5 ページ)

[窪田順生,ITmedia]

いかにして、禁煙をさせないか

 先ほど述べたように、IQOSもgloもそしてプルーム・テックも購入はもちろん、サイトをみるだけでも「メンバー登録」を求めてくる。ではそこで得られる個人情報をどう取り扱うのかを利用規約を確認すると、だいたい以下のような文言が出てくる。

  • 個人を特定しない方法によるマーケティングデータ作成のため(IQOS公式サイト:個人情報の取り扱いについて)
  • 個人を特定しない方法でのマーケティングデータ作成(glo公式サイト:プライバシーポリシー)
  • お客様個人を特定しない方法で、マーケティングの統計データとしての活用(JTスモーカーズID たばこマーケティング部門の個人情報の取り扱いについて)

 この喫煙者ビッグデータがどのような「たばこマーケティング」に活用されるのかは企業秘密だろうし、筆者には見当もつかない。ただ、「いかにして、禁煙をさせないか」という戦略がキモになるのだけは間違いないのではないだろうか。

プルーム・テックのサイトも、「会員登録」をしなければ、ほとんど情報を見ることができない(出典:JT)

 厚生労働省が先日発表した「平成29年 国民健康・栄養調査」によると、2017年喫煙率は過去最低の17.7%。男性が29.4%、女性が7.2%と初めて男性が3割を切るなど、喫煙者の減少に歯止めはかからない。また、喫煙者の中で「たばこをやめたい」と考える男性は26.1%、女性は39%とかなりの高い禁煙志向がある。中でも、20代男性の「たばこ離れ」が顕著で30.4%となっているのだ。

 こういう厳しい国内環境の中で、「IQOS男子が合コンでモテモテ!」「この秋、プルーム・テックがシャレオツ女子のマストアイテムに」みたいな売り方が難しいのは言うまでもない。そうなると、「今の喫煙者に禁煙させず、もっとじゃんじゃん吸ってもらう」という方向、つまり、先ほどのロイター報道で出たように「中毒性を高める」ことしか生き残りの道がないのは明白だ。

 中毒性を高めるには、「中毒者」のことを今以上に知らなくてはいけない。どういう属性の人で、どういうライフスタイルを送って、どういうものに興味を持ち、どれくらい吸っているのか。そんな「喫煙中毒者ビッグデータ」が必要不可欠だというのは、一般的なビジネスセンスのある社会人なら誰でも想像がつく。消費者金融やヤミ金が隆盛を極めた時代、「武富士」から流出した多重債務者リストをベースに、そこへ新たな債務者を加え、いかに独自の「借金中毒者リスト」を作成するかという競争が闇金の世界で行われていたが、構造的にはそれとよく似ている。

 こういう国内事業環境の中で、たばこ会社が、「個人を特定しないマーケティングデータ」のためにせっせっと個人情報をかき集めている姿を見せられ、「これは未成年者の喫煙を防ぐためですよ」と説明されても、「そうですか」と素直に受け取れないのもしょうがないのではないか。

 健康への害が指摘された1950年代から世界的タバコ企業がいかにして、たばこを大衆に売ってきたのかがよく理解できる『悪魔のマーケティング タバコ産業が語った真実』(原題:ACTION ON SMOKE AND HEALTH 日経BP社)を読めば分かるが、これまで「たばこ」というものは、「かっこいい」「自由」というイメージを訴求して、大衆の支持を広げてきた歴史的経緯がある。

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