2.勇者待望論:誰かがやってくれるから、自分が動くのは損
加えて厄介なのが、勇者待望論。この世を救う伝説の勇者がすべてを解決してくれるという心理です。
RPG(ロールプレイングゲーム)を楽しんだ経験のある人であればよく分かると思いますが、主人公である勇者を操作して町や村で通りすがりの人物に話し掛けると、「おお、勇者よ。この世を救ってくれ!」と語りかけられるシーンに遭遇します。道行く吟遊詩人も「勇者こそが希望の光。ラララララー」なんて歌で主人公を讃えます。
もちろん、これは世界を滅ぼさんとする強大な力に立ち向かう力を有していないからこその畏敬の念だと思いますが、だからといってほとんどの場合、直接勇者を助けてくれるわけではないのです。「何にもできないけれど、一晩の宿を提供するよ」とか、「この薬草を持って行ってくれ。よく効くから」なんてことも起こらない。嘆いていたりあきらめていたりして、何もしないのです。働き方改革や業務改革を推進する当事者は、RPGの勇者と同じような状況にさらされていることが少なくありません。
結局のところ組織やコミュニティの大多数は、自分には関係ない、自分にはできない、面倒なことに巻き込まれたくない。そんなことの責任を負いたくない。そんな心理で安全地帯からシニカルに眺めているだけであることが少なくない。そのくせ、失敗すると組織や社会全体から非難されてしまう。RPGでも全く同じで、世界を救う戦いに挑んでいるのに「おお勇者よ、死んでしまうとはなさけない!」と教会で怒られてしまうのは皮肉なものです。
誰かがやってくれるから、自分がやると損をするという心理。まるでPTAの役員決めのような責任の回避はビジネスの現場でもよく起きていないでしょうか。
GLOBALCOPYRIGHT © OKAMURA CORPORATION.ALL RIGHTS RESERVED
Special
PR注目記事ランキング