「生産性」に潜む“排除”の論理 新潮45事件の薄気味悪さ河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(6/6 ページ)

» 2018年09月28日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]
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「炎上騒ぎ」で終わらせてはならない

 方や、今の「日本社会」はどうでしょうか。

 「生産活動にプライオリティをおいている社会である以上、障害者は社会における“無駄な人”」。「障害者」という部分を、「高齢者」「病を患った人」「働きながら介護している人」「働きながら育児をする人」などと置き換えても文章は成立すると思いませんか?

 つまり、生産活動“だけ”に、プライオリティをおいている社会である以上、「障害者」は至る所でつくられる。そして、私もその1人になるリスクを、常に抱えているのです。

 世の中が「資本経済」で回っている以上、生産性に価値を置くことは避けて通れないかもしれません。闇は想像する以上に深く、「生産性」という価値観は、血脈のうねりのごとく私たちの体内に染み付いているかもしれない。

 でも、何が普通で、何が普通じゃないのか。何が障害で、何が障害じゃないのか。「個人」の問題とされている“当たり前”を、「社会」の問題とすると、ほのかな光が見えると思うのです。

 常識は常に「無知」と背中合わせです。

 今回の一連の事件が「炎上騒ぎ」で終わるのではなく、優しい社会の一歩になることを願うばかりです。

河合薫氏のプロフィール:

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 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。

 研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)


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