「定価」という概念がなくなる、そんな時代が来るかもしれない――。
航空券や宿泊予約などでは一般化しつつある「ダイナミックプライシング(変動価格制)」。最近ではユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が他のテーマパークに先駆けてチケットのダイナミックプライシングを導入することが話題になった。
これを医療や理美容などさまざまな分野に広げて“世の中の当たり前”にすべく、検索エンジン事業を展開するフォルシアと京都大学が共同研究契約を締結した。10月1日に共同研究を始めた。2年という契約期間内にサービス化を実現したい考えだ。
ダイナミックプライシングは、需要に応じて価格をコントロールする仕組み。旅行業界では、お盆や年末年始といった繁忙期に航空券や宿泊施設の価格が上がり、閑散期には価格が下がることが一般的である。しかしながら、こうした現状のダイナミックプライシングは「(ホテルなど)供給側の論理で値上げが行われたり、恣意的に価格が設定されたりと、ユーザーにとっては必ずしも公正性があるとは言い難い」と京都大学大学院の梅野健教授は指摘する。
そこで本共同研究では、金融市場の価格変動分布や地震が起こる間隔の確率統計分布などを専門とする梅野教授と、JTBやANA(全日本空輸)をはじめ国内航空会社および大手旅行会社が運営する旅行予約サイトの約8割に検索プラットフォームを導入するフォルシアが両者の知見を生かして、ダイナミックプライシングの理論(モデリング)を構築し、機会損失や在庫ロスといった需給バランスの不整合がもたらす課題の解決を図るのを主目的としている。
具体的には、「利用頻度」と「空き状況」の関係に着目。空いている枠を埋めるという構造は従来と同じだが、商品ではなく人に対してプライシングする。「人ごとに価格とタイミングをコントロールすることで空き在庫を埋めていく」とフォルシア 技術部の新谷健氏は説明する。例えば、映画館の場合、その日の空席状況や訪問回数などに応じて人それぞれに最適な価格を提示するイメージだ。
共同研究の初期フェーズでは、ダイナミックプライシングに関連するデータの収集とモデル化を検討し、実装実験フェーズにおいて理論作りやモデル化を検証する。ビッグデータの収集においては「取引のある旅行会社などに呼び掛け、データ提供などの協力を仰いでいく」とフォルシア 経営企画室長の洲巻圭介氏は語った。
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