「そうだ 京都、行こう。」はなぜ25年も続き、これからも続いていくのか杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/4 ページ)

» 2018年10月19日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]
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「そうだ 京都、行こう。」が担う新たな役割

 JR東海が「そうだ 京都、行こう。」で首都圏のレジャー客を関西方面へ吸い出してしまうから、JR東日本も2005年から「大人の休日倶楽部」で対抗し、首都圏のレジャー客を自社エリアの東北方面へ必死に誘い出している。JR西日本は京都が自社エリアになるため、京都キャンペーンは利点が少ない。しかし首都圏のレジャー客誘致とエリア内の観光需要を喚起するため、「三都物語」キャンペーンを実施した。現在は「DISCOVER WEST」を実施し、首都圏のレジャー需要を新大阪から西の瀬戸内へ吸引している。

 JR他社のキャンペーンは「そうだ 京都、行こう。」に刺激を受けて始まったと言っても過言ではないだろう。しかし、「そうだ 京都、行こう。」が存続する理由は、新幹線のレジャー需要開発ではない。JR他社との競争という見方は短絡的すぎる。JR東海にとって、東海道新幹線の新たなライバルは国内にはない。ライバルは格安航空会社(LCC)が就航するアジア向け観光需要だ。

 JR東日本が自社エリアのレジャー需要をJR東海に奪われて焦るように、JR東海は首都圏のレジャー客が海外旅行へシフトすることに危機感を持っているはずだ。「国内旅行より韓国のほうが安い」「台湾が安い」と言われ始めて久しい。海外の旅は確かにエキゾチックで楽しいだろう。それをJR東海は食い止めたい。首都圏の人々の関心が海外へ向きつつある今だからこそ「そうだ 京都、行こう。」を唱え続けなくてはいけない。それはJR東海の「国家のために日本の動脈を担う」という強い意志に通じる。

 そんなふうに、JR各社の広告キャンペーンを見ていくと面白い。「そうだ 京都、行こう。」キャンペーン公式サイトは、YouTube公式チャンネルで歴代CMをズラリと公開している。あなたの思い出にシンクロするCMもきっとあるはずだ。そして、25年も続くCMには、その時代に合わせたメッセージや思いが見え隠れするかもしれない。

 YouTubeチャンネル そうだ 京都、行こう。【公式】

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。


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