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» 2018年10月23日 08時00分 公開

スピン経済の歩き方:数の帳尻合わせが、日本のお家芸になってしまう根本的な原因 (2/6)

[窪田順生,ITmedia]

現場に「ズル」がはびこる背景

 では、口を開けば「世界一の技術力」と自画自賛してきた日本のモノづくりが、なぜこんな事態に陥ってしまったのか。

 SankeiBizの『品質不正、日本メーカーに共通点 ガバナンスの欠如、コストダウンで現場負担の増加も』(10月20日)という記事によれば、「納期順守の重圧」「人手不足」が指摘されている。また、改ざんの多くが、非主流部門ではないことから経営陣がそこまで厳しくチェックしなかったことも要因として挙げられている。

 こういう報道が出る一方で、モノづくり現場に詳しい一部の技術者や専門家からはやや異なる見解も出ている。自動車にしてもオイルダンパーにしても、完成品検査でちょこっと数値がいじられただけで、安全や品質自体にそこまで大きな影響はないのだから、いたずらに不安をあおるなというのだ。

 日本は国や顧客の求める品質基準が非常に高く、厳密すぎるため、高い品質と納期順守の両方を強いられるモノづくりの現場が疲弊しまくっている。そこで、限られた時間や労力の中で結果を出すために、仕方なく「データ改ざん」が悪しき習慣化してしまった。

 要は、制限速度をちょこっと超えて走ったくらいで、事故が起きるわけでもないんだから、そこまで大騒ぎをするんじゃないよ、というわけだ。

 確かに今回のKYBの改ざんを行った検査担当者たちも、社内調査に対して「時間を省くために行った」と証言しているという。つまり、彼らにとって「データ改ざん」は「不正」など大それたものではなく、単に質の高い製品を納期に間に合わせるために苦肉の策として生み出された「ちょっとしたズル」くらいの感覚である可能性が高いのだ。

現場の担当者は「不正」をしているのではなく、「ちょっとズルをした」感覚なのかもしれない(写真はイメージです)

 そういう意味では、「現場は悪くない、諸悪の根源は制度だ」というのもかなり説得力があって、一部は賛同するのだが、だからといって、厳密すぎる基準を見直して「幅」を認めたところで、すべて問題が解決するとは思えない。喉元過ぎればなんとやらで、ほどなくするとまた似たような「ズル」がモノづくりの現場でひっそりとまん延していくはずだ。

 「一体何を根拠にそんな無責任なことを言うのだ!」とこれまたすさまじいクレームが飛んできそうだが、根拠はちゃんとある。

 それは「員数主義」だ。

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