数の帳尻合わせが、日本のお家芸になってしまう根本的な原因スピン経済の歩き方(6/6 ページ)

» 2018年10月23日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4|5|6       

「データ改ざん」は日本のお家芸

 もうお気付きだろうが、日本軍にいた人々が普通に「員数」という言葉を用いていることからも分かるように、実はこれは軍隊内用語である。

 70年が経過したいまも我々の労働現場では、当たり前のように軍隊の言葉が溢れている。大将、一兵卒、先兵、陣容の立て直し、同期の桜、二階級特進……。ならば、日本軍を壊滅に追い込んだ「員数主義」が、日本軍のマネジメントを受け継いだモノづくりの現場に残っていても何ら不思議はないのではないか。

 このようなことを踏まえると、残念ながら、日本モノづくりのデータ改ざんはまだまだ続く可能性が高い。

 マスコミで取り上げられて世間の注目度が上がった不正行為は、さまざまな組織で「ウチもないか確認しろ」という社内調査や、「隠ぺいしていたなどと叩かれたら大変だからすぐにマスコミに公表だ」という情報開示の動きを促進させる。

 外食の異物混入事件、表示不正問題、教育機関の体罰など一度火がつくと立て続けに似た事案がボロボロと出てくるのはこういう仕組みだ。

 日本軍の員数主義も戦争が始まった当初はそこまで問題ではなかったが、戦況が悪化するにつれて徐々に露呈して、兵士を「数」でしか見ない人命無視の作戦や、辻つま合わせのような無謀な作戦のトリガーとなった。

 これと同じで、日本のモノづくりも「世界一の技術」とか言ってイケイケだったときは、誰も「員数合わせ」など気にかけなくてよかった。だが、労働人口が減り、国際競争で苦しくなってきたことで、「無理の帳尻合わせ」にまい進しなくてはいけなくなってしまったのである。

 冗談抜きで、「データ改ざん」は日本のお家芸となってきた。モノづくりの信用が失墜していくのを避けるためにも、我々が知らぬ間にとらわれている「員数主義」から目を背けず、この思想から脱却すべき時にきているのではないか。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで200件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


前のページへ 1|2|3|4|5|6       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.