最近はあまり使われないが、これは「員数合わせ」という言葉があるように、とにかく数字の帳尻さえ合えば問題なしという考え方である。数字にきっちりしているなんて几帳面でいいじゃないと思うかもしれないが、この員数主義は改ざんや捏造(ねつぞう)という不正の温床となることが多い。
数字が合えば問題なしということは裏を返せば、数字を合わせるためにはなんでもやるというモラルハザードを引き起こすからだ。
この員数主義にモノづくり企業をはじめ日本型組織は頭のてっぺんから足の先まで毒されている。例えば分かりやすいのが、日本を代表する大企業・東芝だ。「チャレンジ」の名の下に、現場にプレッシャーをかけて利益のかさ上げなんてのは、この組織が経営陣から現場まで員数主義に陥っていたことを、これ以上ないほど雄弁に語っている。
「ザ・日本型組織」ともいうべき中央省庁もしかりだ。財務省は局長の国会答弁と整合を合わせるように公文書をサクッと書き換えたし、厚生労働省は働き方改革法案を通すため、裁量労働制についての調査データを改ざんした。行政機関全体では、あの手この手のスキームを使って障害者雇用の数が大きく見えるように見せかけていた。
国のために働きたいと志を抱き、せっせと勉強をして、公務員試験をパスした真面目な人たちがなぜ組織に入った途端、こんな数字の改ざんばかりに知恵を絞っているのかというと、役人の仕事というのは極端な話、すべて「員数合わせ」で成り立っているからだ。
今年度の予算を使い切らないと来年度は予算が減らされてしまう。この法案を議会に通すためには、その根拠となる数字を調査などでつくらなくてはいけない。必要な書類がそろってないので、この申請は受け付けられません――。
霞ヶ関ピラミッドを上に登れば登るほど、国民の役に立つ全体の奉仕者という理念からかけ離れ、議会や政治家対応として、数字合わせにきゅうきゅうとしなくてはいけない現実があるのだ。
そんな員数主義に骨の髄まで毒された役所が整備した規制や基準の下、管理監督されるモノづくり企業も当然、員数主義者の集団となっていくのは容易に想像できよう。
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