数の帳尻合わせが、日本のお家芸になってしまう根本的な原因スピン経済の歩き方(4/6 ページ)

» 2018年10月23日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

データ改ざんが多発する「根本的な原因」

 この1年、「改ざん」が明らかになった企業を見てもそれは明らかだ。どういう言い訳をいくらしたところで、検査担当者が国や顧客の基準内に数値を収める、という「員数合わせ」に心血を注いでいたのは動かしようがない事実である。

 しかも、ほとんどの企業でこのようなデータ改ざんは長年続けられてきた。基準が厳しいというのなら、誰か一人くらい文句を言ってもよさそうなものだが、監督官庁の員数合わせ的な基準に対して、モノづくり企業は黙って従い、現場も会社が掲げる数値目標に黙って従った。その「無理」のしわ寄せを検査担当者が「データ改ざん」でチャラにしたのである。

 つまり、モノづくり企業でデータ改ざんが多発しているのは、制度うんぬん、人手不足うんぬんという理由もあるが根本的な原因は、監督官庁と民間企業の「員数主義」による無理や矛盾を完成品検査の担当者たちが「帳尻合わせ」をしてくれていたのが続々とバレ始めている、と見るべきなのだ。

 そんなのはお前の妄想だ、という声が聞こえてきそうだが、実はそうとしか考えられない理由がもうひとつある。

 日本型組織のフォーマットというか、ベースとなったある組織も、やはり員数主義に毒されたことで不正が横行して最終的に自滅した。カエルの子はカエルではないが、日本のモノづくり現場も、同じ過ちを繰り返している可能性が極めて高いのだ。

 その組織とは、日本軍である。

 『日本人が「通勤地獄」から抜け出せない、歴史的な背景』『電通や東芝といった大企業が、「軍隊化」してしまうワケ』などの記事で指摘させていただいたが、比喩とかではなく日本の労働現場は軍隊式のマネジメントをベースにしている。

 戦時中、生産性向上が叫ばれるなか、モノづくりに従事していた若者たちの多くは、「産業青年隊」などの名目で続々と軍に体験入営をさせられ、軍隊式の組織マネジメントを叩き込まれた。そして、以下のようなスローガンが全国の生産工場で掲げられたのである。

 『軍人精神を職場に活かせ』(読売新聞 1943年8月7日)

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