実際に給食の費用を寄付するスポンサー企業を巻き込むことにも成功した。18年は伊藤園や大宮さんの古巣の日産など大企業を中心に40社・団体が参加している。商品とおにぎりを撮ったものや、家族のお出かけ風景など特定の写真を投稿すればさらに寄付される給食の数が増える仕組みだ。
18年から本プロジェクトに参加した日産のマーケティング・マネージャー、新田泰義さんは「今回の寄付の目的はCSR(企業の社会的責任)の達成ではなく、あくまで車のマーケティング」と言い切る。新田さんが担当するセレナは子供のいる世帯向けのミニバンで、プロジェクトの参加者とターゲットが一致すると踏みブランドイメージの向上を狙った。
「これまでSNSではモデルなどのインフルエンサーを起用してセレナの認知を広めようとしていたが、メーカーから消費者への一方通行になりがちだった」(新田さん)。今回、日産は自社の車とおにぎりを結び付けての写真投稿はあえて呼びかけなかったが、「びっくりするくらいおにぎりとセレナの写真が多く投稿されていた。SNSユーザーとセレナが同じ立ち位置でアクションを応援している、という形になっている」(新田さん)。
大宮さんも「インフルエンサーにお金を払って流行らせる手法はありきたり。(SNS上で)見ている人にはすぐばれてしまう」と指摘する。今回もTFT側は写真をアップした人に感謝の言葉は述べたが、基本的に特定の人に投稿を促すことはしなかった。「そうした時点で活動はシュリンク(萎縮)する。われわれの良さが伝わらなくなる」(大宮さん)。
大宮さんによると、企業がSNSでお金をかけて行うキャンペーンの投稿件数は1カ月で数百〜数千件程度が一般的という。「SNSユーザーにどう自分事として感じてもらえるか」を追求したTFTの成功は、有名人のインフルエンサーやメディア露出に頼りがちな企業のSNSマーケティングにも影響を与えそうだ。
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