これらの「生産性向上」は「クライシス」がもたらした。「深刻な人手不足」によって尻に火のついた巨大組織が、生き延びるために「変わらなきゃ」と進化の道を模索し始めたのである。
このような宅配業界の今を踏まえて、想像をしてほしい。もし仮に「深刻なドライバー不足」を解消しようということで、日本語も達者で、安全運転もできる外国人ドライバーを迎え入れていたら、ヤマトや佐川の経営陣は「変わらなきゃ」と思っただろうか。思うわけがない。
人手不足が解消されてしまうので、ラストワンマイル協働組合のドライバーたちも「下請け」の仕事が増える。つまり、給料は倍増しない。ヤマト社員たちの賃金も上がらない。むしろ、従来並の賃金でキビキビと働く外国人ドライバーが増えていけば、「サービス残業くださいよ」なんて面倒臭い社員たちはどんどんうとまれていくだろう。
生産性向上の動きにもブレーキがかかる。人手が足りれば、各社でサービスやインフラを共有しようなんてぬるいことではなく、「我が社が一番」というシェア争いに邁進する余裕が生まれるからだ。
人手不足というクライシスは、低賃金労働に依存する経営者を追いつめて、「生産性向上」と「賃金アップ」を踏み切らせる。だが、安易に外国人労働者を受け入れて経営者を甘やかすと、そのイノベーションはすべてパアになる。
安倍政権の移民政策は、このような残念な結末を招く恐れが極めて高いのだ。
安倍政権の移民政策は残念な結果を招く可能性が高い
外国人労働者に依存をしようという14業種が深刻な人手不足にあるのは事実だが、ではクライシスに直面した宅配業界のように、労働者の待遇改善や、徹底した生産性向上を行なっているのかというと首を傾げる。
そこまでの抜本的な改革や、これまでの常識ではあり得ないような効率化が行われ、それでもまだ人手不足だというのなら「移民」もいよいよ考えなくてはいけないが、まだそこまでではないという印象だ。
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