だから「移民」を受け入れてはいけない、これだけの理由スピン経済の歩き方(3/7 ページ)

» 2018年10月30日 08時25分 公開
[窪田順生ITmedia]

多くの人が誤解をしている最大のポイント

 おいおい、人手不足で悲鳴をあげる業種が救済されるのに「得がない」なんて、こいつの頭は大丈夫かと心配してくださる方も多いかもしれないが、実は多くの人が誤解をしている最大のポイントがここにある。

 「外国人労働者の受け入れ拡大」で救われるのは、「現行の賃金でコキ使うことができる労働力がほしい経営者」だけであって、労働者側にはまったく恩恵はない。

 むしろ、これまで以上にシビアな状況に追いやられる。そもそも、なぜ日本の賃金が上がらないのかというと労働力が「過剰」だからだ。2017年の労働力調査では15歳から34歳の就業者は1643万人と年を追うごとに減っている。ここだけ見れば、「貴重な労働力」なので賃金も上がっていくはずだが、そうならないのは、55歳以上の「高齢労働者」がまだあふれかえっているのと、外国人留学生と技能実習生という「短期移民」が5年前から倍に膨れ上がっているからだ。

 あと数年で高齢労働者がどっと減れば賃金アップのチャンス到来だが、入れ替わりで単純労働を担う移民がわっと入れば、低賃金がビタッと定着する。そこに加えて、上司から「お前、今度やって来たムハンマド君に完全に負けてるじゃん」なんて嫌味を言われる方も現れる。

 というと、必ず「人手不足でバタバタと企業が潰れたら、路頭に迷う人があふれるぞ」とノストラダムスの大予言ばりの恐怖訴求をする人がいるが、1999年7の月になっても恐怖の大王が空から降ってこなかったように、人手不足が進行しても我々庶民へのダメージは限定的だ。

 確かに、「低賃金労働者」をどれだけ確保できるか、なんてビジネスモデルの企業はバタバタと潰れてしまうだろう。ただ、こういう「ブラック労働」を前提とした企業がちまたにあふれていることが、日本の労働者の賃金アップを妨げている最大の原因なので、正直、潰れてくれてもブラック経営者が労働者に変わるだけで、そこまで庶民の生活に影響はない。

 また、人手不足が深刻化していけば、企業は労働力を使い捨てにせず、大事に囲い込まざるを得ない。賃金アップはもちろん福利厚生など環境整備もされる。当然、これまで日本企業の至るところにあって「これってどう考えても効率悪くね?」という無駄な慣習などをサクサクと削って、生産性向上を進めることも余儀なくされる。

 働きやすくて金払いも良いとなれば、これまで「雇用ミスマッチ」が指摘されるような不人気業種にも労働力が集まってくる。つまり、人手不足が進めば、一部の経営者は苦境に追いやられるだけで、労働者全体の地位は向上するし、生き残りを目指す企業が続々と生産性向上の動きも促進されるなど、日本にとっては悪い話ではないのだ。

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