なんて指摘は何も筆者だけではなく、これまでもさまざまな専門家がおっしゃってきたが、そのたびに「机上の空論だ」「外国人に頼らざるを得ない現場の苦しさを分かっていない」と猛反発にあってきた。
ただ、「人手不足で労働者が得をして、企業の生産性向上も促進される」ということが机上の空論ではないことは、誰もが知るあの業界が証明している。
宅配業界だ。
もはや忘れてしまった方も多いが、この世界は「深刻なドライバー不足」で少し前に「宅配クライシス」だと大騒ぎされてきた。Amazonのせいでドライバーが死にそうになっているんだから、なんでもかんでもポチポチ買い物するのは控えるべきなんて言い出すジャーナリストや評論家も多くいた。
だが、あれから2年ほど経過したが、日本の宅配サービスは崩壊していない。もちろん、いまだに大変な苦労を強いられているのは事実だが、「もう終わりだ」「崩壊だ」と大騒ぎされたほど壊滅的な事態にはなっていない。
いろいろな見方があるだろうが、これは人手不足によって、賃金アップと生産性向上が進んだ結果だと見ている。その象徴が、宅配クライシスを受けて今年4月に設立したラストワンマイル協同組合だ。
「何それ?」という人も多いだろうが、1都3県(東京、千葉、神奈川、埼玉)の大手配送会社の下請けを行ってきた運送会社23社が参加した組合で、広域で連携して大手と比べてかなり廉価な宅配サービスを提供している。
絶望的なドライバー不足の中で安さをウリにするなんて自殺行為では、と心配するだろうが、組合理事長である志村直純氏は、通販協会の会報誌で「組合のドライバーの待遇」について、こんな風におっしゃっている。
『あとはもう給料が良くなっていくだけなので、3〜4年経つと週休2日で初任給50万円というバブル期くらいになると思います。逆に言うと、そのようにやらなければ配送ネットワークが維持できないことを、組合員は皆これまでの経験でよくわかっている』(JADMAニューズ 9月・10月号)
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