もともと、彼らはみな宅配大手の「下請け」なので、市場の運賃よりもかなり安い価格で仕事を請け負っていた。『一般的には「廉価」であっても、十分すぎるほど利益となるので、ドライバーの給料も倍増できる』(志村理事長)のだ。
人手不足というクライシスによって、彼らのような下請けが新たなプレイヤーとして求められて結果、労働者の賃金アップにつながったわけだ。
もちろん、これはラストワンマイル協同組合だけではない。ご存じのように、業界大手のヤマト運輸では、7万6000人という社員への「残業代未払い」が明らかになり彼らへの支給が行われた。今後はこれまで「サービス残業」として片付けられてきた賃金も払われるというわけなので、賃金アップ以外の何物でもない。
もともとこの問題は、横浜の営業所でドライバーの方が訴訟を起こすなど、労働者からの突き上げによって発覚した。そのような意味では人手不足によって、労働の価値が上がったとも言えるのだ。
だが、人手不足が本当に素晴らしいのは、これまでの業界の常識からすればあり得ない「生産性向上」がもたらされることにある。
クライシスの後、宅配ボックスの活用、日付指定、置き配(玄関先に置いておく)などの形で、宅配業界では効率化が進められているのはご存じの通りだ。これまでヤマトのドライバーと、佐川のドライバーはライバルなので競い合うように配送をしていたが、タワーマンションでは協力をして、一社がまとめて他社の荷物を配る試みも進められている。
また、山奥の村などの場合、それぞれの宅配会社がトラックを出してそこまでたどり着くだけでも大変な労力なので、乗り合いバスの一角に各社の荷物を、相乗りさせてもらい、現地で委託先の業者が配送をする、という「公共交通機関の活用」も当たり前になってきた。
ヤマトでは、無人の宅配車両が指定された場所へ荷物を届ける「ロボネコヤマト」という実証実験を進めている。佐川は10月29日から、京都府南部のタクシー会社「山城ヤサカ交通」と協力して、タクシードライバーが荷物の集荷や客に届ける事業を始めている。佐川的にも助かるし、タクシードライバーも「副業」ができてハッピーというわけだ。
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