5年間ヒトヤスミしていたのに、なぜ「一休」は再成長したのか水曜インタビュー劇場(45%増公演)(2/6 ページ)

» 2018年11月21日 06時50分 公開
[土肥義則ITmedia]

視線を「お客さん」に向ける

土肥: 一休の取扱高を見ると、2006年までは順調に伸びているのですが、07年から11年にかけて横ばいが続いていますよね。この5年間、一体何があったのでしょうか?

榊: 当社は高級宿泊サイトを運営していて、かなりのシェアを確保していました。そうした状況の中で業績が伸びていなかったので、社内からはこのような声がありました。「僕たちは高いシェアを手にしている。だから成長できないんだ」「高級ホテルに泊まる人は、それほどいないんだ」と。

 ただ、競合他社を見ると、かなり成長していることが分かってきました。それまではほぼ独占のような感じで売り上げを伸ばしていたので、他社がそこに目をつけたのでしょう。サイト上で特集を組んだり、別サイトをつくったり。大手企業からすれば、当社の売り上げはそれほど脅威に感じないはず。ただ、取り扱っているホテル数は少なくて、オペレーションはそれほど大変ではない。要するに利益率が高いところに着目して、たくさんの競合が参入してきたんですよね。

 このように市場の動きは変化していたのに、社内からは「自分たちは弱くなっていない。市場が悪いだけだ」といった指摘があったのですが、それは間違い。実際、他社は伸びている。ということは、社内のどこかに課題があるのではないかと感じました。

一休の取扱高推移

土肥: 榊さんの経歴を見ると、大学を卒業して、メガバンクに入行している。その後、コンサルティングファームで働いていて、その流れで一休を担当するんですよね(2013年、一休に入社。14年に取締役副社長COOに就任)。外部の人間でありながら、一休にも席があったわけですが、榊さんの目にはどのような課題があると感じたのでしょうか?

榊: 「視線を『お客さん』に向ける」ことにしました。当社のビジネスモデルは、宿泊施設とお客さんをマッチングさせること。宿泊施設を見なければいけませんし、お客さんも見なければいけません。このような話をすると「両方見ればいいじゃないか」といった声を聞くことがあるのですが、個人的に「ひとつしか見れない」と思っているんですよね。

 当社の場合、創業してからずっと宿泊施設のほうを見ていましたが、それだと売り上げが伸びないことが分かってきました。このままではいけないということで、お客さんのほうを見るようにしたんですよね。

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