5年間ヒトヤスミしていたのに、なぜ「一休」は再成長したのか水曜インタビュー劇場(45%増公演)(3/6 ページ)

» 2018年11月21日 06時50分 公開
[土肥義則ITmedia]

会社のあらゆることを変える

土肥: 「お客さんファースト」という考え方ですよね。ただ、言葉では理解できても、実践することは難しい。「見る」と言っても実際には「見ていない」ケースが多いのですが、一休ではどのようなことに取り組んだのでしょうか?

榊: 会社のあらゆることを変えました。例えば、以前のサイトは広告であふれていたんですよね。集客に苦しんでいる広告やバナーなどが回っていたのですが、それを全部なくしました。広告主が喜ぶことをやるのではなく、お客さんが喜ぶことをしようと。

 現在のトップ画面を見ると、一番上のところに宿泊施設が並んでいますが、これはすべて自社の手作業によるもの。「ここのホテルはものすごくいい。だから、お客さんに泊まってほしい」という思いがあって、紹介しているんですよね。少し下のほうに「おすすめ ホテル・旅館」がありますが、ここはお客さんの嗜好などに合わせて、表示するようにしています。

一番上のところに表示されている宿泊施設は、一休のスタッフが選んでいる

土肥: ふむふむ。社員は「会社のため」と思ってやってきたのに、ある日、「それはダメ。これからはこーしなさい」と号令をかけたわけですよね。多くの人が戸惑いを感じたのでは?

――取材時、同席していたUさんがここで登場する。

Uさん: 当時のワタシは営業をしていて、戸惑いはものすごくありました。ある日、高級車の広告が入ったんですよね。数百万円の契約だったので、会社にとってはいい話のはず。売り上げに貢献しているので、悪い話ではない。でも、上司からはこのように聞かれました。「お客さんは高級車が好きかもしれない、乗っているかもしれない。しかし、その広告を見たいと思っているのだろうか」と。

 そのときは何も言い返せませんでした。ただ、高級車の広告を掲載することで、結果がでればいいと思っていたんですよね。

土肥: 結果はいかに?

Uさん: 数字を見ると、全くダメでした(涙)。それまでは宿泊施設のことを一番に考えていたので、ホテルが「これを売りたい」と言えば、最優先で考えなければいけませんでした。「バナー広告を出したい」という声があれば、それに応じていましたし、「メルマガで紹介したい」という話があれば、すぐに対応していました。

 ただ、繰り返しになりますが、その方法だと結果が出ない。じゃあ、どうしたのか。「お客さんに喜ばれることをしよう」といった考えで行動すると、売り上げが伸び始めたんですよね。ここでもし結果がでなかったから、いまも迷走していたかもしれません。

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