――驚くような体験を期待して途上国に行っても、首都はどこも似たり寄ったりと感じます。10年前は独特の面白さがあったような場所に久しぶりに行ったら、案外普通になっていたと感じることもある。残念ですが、時間の経過とともに均質化するというのは、日本に限らず自然な流れなのでは?
両面あると思っています。大きな町というものは、より効率的に、より便利になろうとするものなので、均質化するというのはおっしゃる通りでしょう。僕としては、それはそれで好きなので構わない。一方で、小さな町では、そこで小さな経済圏が回るようになれば、それぞれ異なる個性を持った面白いものが生まれてくるのではないかと思うのです。
恐らく、国全体があまり豊かじゃないと、均質にして効率良くやらないと回らない、という発想になる。そこが回り出せば、もっと多様な場所が出てくるのではないか、と。
――しかし、今の日本は経済的にあまり豊かとは言えませんよね?
タマゴが先か、ニワトリが先かのような話ですが、日本が豊かでなくなっている理由も、それこそ均質性を求めるところにあると思うんです。多くの人にとってそこそこ受け入れられるようなものばかり作っているから、それ以上に突き抜けられない。
だからこそ、東京一カ所に集中するのではなく、いろんな場所にいろんな面白い町を作らなくては。これは、そこで暮らす一人一人についても同じことが言えるのではないでしょうか。日本のあちこちに特徴的な場所が生まれれば、今よりももっと多くのユニークな人が生まれる確率は高まるように思います。
しかも、多拠点を移動しながら暮らすとなれば、その組み合わせはどんどん増えるから、ユニークさもどんどん増していくはず。もしかすると、多拠点生活が個人の生き方、働き方にもたらす一番のメリットは、この点にあるのかもしれないですね。
(取材・文:鈴木陸夫、岡徳之<Livit>、撮影:浅田よわ美)
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