では、なぜ生産性向上を避け続けることができたのかというと、どんなにダメな経営者でも「外国人労働者」を使うことで、人手不足が乗り切れてしまったからだ。
本当に深刻な人手不足ならば、賃金アップできない事業者から潰れていく。自然淘汰が進んで、産業内の整理や再編が進む。だが、日本の場合は「隠れ移民国家」だったので、いざとなれば低賃金労働者が確保できる。そこで本来なら廃業・吸収されたはずの、生産性の悪い事業者が延命できてしまったのだ。
もっと言ってしまうと、日本の「人手不足」が真の人手不足ではなく、「同一産業内の企業が多すぎる」ことが招いた幻影だ。その象徴がコンビニ業界である。
今や外国人に頼らないと回らない、というコンビニオーナーの悲鳴が聞こえるコンビニは大手3社がしのぎを削るドミナント戦略のせいで、同一エリア内にあまたの事業者が乱立することとなっている。
本来、マーケット的にもニーズ的にも1店舗で済むような地域であっても、「成長」の名のもとで出店が進められる。そんな明らかな過剰供給のなか、「バイトが集まらない」とこの世の終わりのように騒いでいる。そのくせ、賃金を上げるわけでもなく、低賃金をキープするために外国人留学生を引っ張ってきているのだ。これが本当の意味での「人手不足」でないことは言うまでもない。
国内のコンビニは右肩上がりで増え続け、現在は5万7000店舗を突破している。地方では深刻な人口減少が始まっているにもかかわらず、だ。このような高度経済成長期のような“右肩上がり成長”の神話から抜けきれないのは、何もコンビニに限った話ではない。今回、人手不足で死にそうだと叫ぶ業界のほとんどが、人口減少社会に見合わない数の事業者が乱立し、競争の名のもとで同じ仕事に、多くの人員が投入されている。
このような産業がすべきことは、増えすぎたプレイヤーを統廃合して、生産性を向上していくことなのは明らかだが、なかなかそこへ踏み切れないのは、「右肩上がり成長」を否定することが怖いからだ。
そして、おびえた経営者が最後にすがるのが「低賃金労働」というドーピング――。つまり、今回の「外国人労働者の受け入れ拡大」というわけだ。
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