では、この時代の事業者たちは、なぜ日本政府が反対した移民政策へと突き進んだのだろうか。そんなもん、会社を続けるために仕方なくに決まっているだろ、という声が聞こえてきそうだが、筆者はそれこそが「恐怖」に尽きると考えている。
60年代にちまたを席巻した「生産性向上」は、実行に移すのは容易なことではない。組織のあり方をゼロから見直さなくてはいけないので、従業員との衝突は不可避だ。ましてや昔の日本企業は「窓際族」なんて言葉があるように、終身雇用なので何もしない社員もたくさん食べさせていた。このような無駄を削減するには、場合によっては非情な決断もしなくてはいけない。
そんな辛いことはしたくない。かといって、今のままでは会社は潰れてしまう。そんな恐怖に苛まれた経営者が、溺れる者はわらをもつかむではないが、場当たり的にすがったのが、日本人ではあり得ないような低賃金でコキ使える労働者、すなわち不法就労の外国人だったのである。
このような話をすると、「こいつは経営者の辛さが分かっていない」とか叱られてしまうかもしれないが、日本の経営者が「恐怖」にとらわれれ、生産性向上を避けてきたことは、「企業数」が如実に示している。
よく言われることだが、日本は企業数が異常に多い。
2010年に経済産業省が、日本の産業競争力を検討するために作成した「日本の産業を巡る現状と課題」という資料があり、その中で詳しくは分析されているが、日本は欧米や韓国では1〜2社しかないような分野でも数多くのプレイヤーが群雄割拠している。「同一産業内の企業が多すぎる」のだ。
そう言うと、「信長の野望」みたいなのが好きな日本人はライバルが切磋琢磨できて良いことだと勘違いをするが、実はこれほど生産性の悪い話はない。国内で「あそこには負けない」「ウチのほうが安く」なんて消耗戦を繰り広げなくてはいけないので、いつまでたっても「低賃金労働」を前提とした成長モデルから脱却できない。こういうビジネスモデルは国際的な低賃金競争で負けると一気に、バタバタと共倒れしていく。その代表が電機メーカーだ。
つまり、日本が他の先進国と比べ、産業の集約化が進んでいないことこそが、経営者が生産性向上という“痛みをともなう改革”を避け続けてきたことの動かぬ証なのだ。
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