ゴーン事件を「西川の乱」だと感じてしまう、これだけの理由スピン経済の歩き方(5/7 ページ)

» 2018年12月11日 08時53分 公開
[窪田順生ITmedia]

「組織の外」に向き合っていない

 では、なぜ聡明な西川社長がこんなリスキーな発言をしたのか。真意はご本人しか分からないことだが、筆者にはやはり「内向き」ゆえの発言ではないかと感じてしまう。

 ゴーンとケリーのコンビが「首謀者」だと断定することは、後々大きな問題に発展する危険性が大きいが、巨大組織のガバナンスという観点で見れば、それほど悪い話ではない。悪いのはあの不良外国人たちであって、パクられていない西川社長たちはクリーンなので、皆さんご安心くださいね、という強烈なメッセージーになるからだ。

 (3)の『4回目の検査不正発覚も姿を見せず』に関しても、これまでのケースと同様に「内向き」なスタンスがにじみ出ている。

 ご存じのように先週、日産で昨年秋から数えると4回目となる検査不正が発覚した。しかし、その謝罪会見に西川社長はあらわれることなく、国内生産と品質保証の各担当役員が登場をした。

 9月に一連の検査不正ドミノの「終結」を宣言してわずか3カ月にそれが大うそになってしまったことに加えて、今回は「ブレーキ」というクルマの安全に直結する部分であり、経営責任は重い。発覚のきっかけとなったスバルの会見でも、中村知美社長が深く頭を垂れていることを踏まえれば、社長が出なくていけない場であることは間違いない。

 にもかかわらず、西川社長は対応しなかった。そこでまず思うのは、「経営責任を追及されて火だるまになる」ことを避けたのではないかということだ。

 西川社長については冒頭で述べたような、ゴーン氏の報酬に関する「サイン問題」が出ていた。検査不正の会見とはいえ、当然そこは根掘り葉堀りと尋ねられるし、週刊ダイヤモンドやウォールストリートジャーナルの「クビ報道」の前兆も当然、つかんでいただろうから、会見でそれを直接ぶつけられてオロオロする恐れもある。そうなれば、ルノーや社内の「反西川」は一気に勢いづく。このような危険性を回避したのかもしれない。

 いずれにせよ、本来ならば社長が出るべき場面に出ないことは、その社長は、社会や顧客という「組織の外」よりも腐心しなくてはいけない、何か大きな問題を「組織内」に抱えているということなのだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.