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金魚すくいにテレビゲームが「仕事」? “虚業”化した障害者雇用をどう変える効率化へのインセンティブなき「異常」(2/5 ページ)

» 2018年12月14日 08時42分 公開
[今野大一ITmedia]

「企業名公表」の弊害

 大企業は、調整金が欲しくて障害者を雇っているわけではありません。本音では、雇用率が未達成になったことで企業名が公表されることを恐れているのです。社会的責任を果たしていないとたたかれるのが怖いわけです。

 一方、中小企業はどうか。例えば100人規模の中小企業が、障害者を2人雇うというのは大変なことなのです。即戦力として見込めるような身体障害者は、ほとんどの場合すでに仕事に就いていますから。だから障害者を雇うことによって掛かる費用の方が、納付金を支払うよりも高くつくと考えているのではないでしょうか。例えば2人不足していれば約10万円ですから、年間だと約120万円ですね。障害者を2人雇うために精神保健福祉士を入れるなどすれば大変な額になります。こんなに費用が掛かってしまうのなら、中小企業は「いっそ納付金を納めましょう」となってしまうわけですね。つまりこの制度はインセンティブとして全く機能していないのです。

 今は子会社を作り、そこに清掃やシュレッダーなどの単純作業を集約して障害者を多数雇用すれば、企業グループ全体として障害者雇用率にカウントできます。これを私は「仕事切り出し型」と呼んでいますが、単純作業を切り出すのにはいつか限界がきてしまいますよね。働き方改革が叫ばれている時代に、トイレ掃除やシュレッダー作業、メール便の仕分けなどを今後も増やしていけるのでしょうか? 確かに障害者の方々は、親会社から切り出された単純作業を一生懸命にやっています。しかしそういう仕事が今後増えるかというと疑問です。企業の業績が上がり、売り上げが増え、事業規模が拡大しているときに、そのような単純作業は増やすべきものなのか。むしろ、そうした事務的な作業は減らしていく方向になると考えています。

 トイレだって本来は汚さないのが一番いいのです。それを障害者の雇用率を達成するために、「積極的に汚しましょう」とするのは本末転倒ですよね? 障害者の人たちが一生懸命働いているからといって、メールで済むことを、「なるべく紙に書いて郵便で送ろう」とするのが正しいことではないでしょう。つまり無駄な間接業務を残せば、効率的な経営に反するのです。だから「仕事切り出し型」で障害者を雇用している企業は、いずれ行き詰まることになるでしょう。

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